צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

【アンナについて】

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チーズのとろける落下過程の上で「ハイ、チーズ」
シャッターの音と共にトンネルから続出するのは各首相であった。
瑞々しい水菜を手でギュッと絞る時に黄色いセックスの夢想をした。
キスをした。チョコレートは謝罪会見時の議員の頭部・鬘(かつら)の間で溶け出した。
(ここで芥川龍之介の世界観の導入)
腹に赤い穴が開いていた。
「フォークで天体えぐっちゃってさあ」とアンナ。
私はiphoneを彼女の顔に近づけると翻訳アプリの変換部をタップし続けた。
「明日はある?」とアンナ
私は「眠れればね」と言った。
こんな卍は見た事があるかい?西日も派手になってきたタイムゾーンでピエロが護摩をはじめた。
「腕時計を確認するサラリーマンの写真を卍に並べ立てましてー...」と唱えていた。
炎は吃驚するほど青くて、それは地上世界の反対側の出来事のように思われた。
アンナはホテルの一室で停止していた。
髪はブロンド、168㎝、ハイソな感じである。
ホログラムのアンナをどかすと背後のアンナの耳に人差し指をいれた。
「168㎝の君の方がよかったよ」と私。
アンナは間欠的にくしゃみをして、そのままキスとなって...

証人喚問である。壇上で宣告したのは月の事である。
「俺はな、月に寝そべってワインを飲んでいたんで。とても優雅なやつだ。この世に病気はないってくらいに。だけどそれじゃ間が持たないだろ?だからオチに睾丸を二つ落とすってのをな」
悪魔は微動だにしていない。証人喚問なんかないんじゃないかってくらいに。
彼は壇上にいながら何か打開する必要があった。
そういう事なのですべての自分にまつわる登記を頭に浮かべてみたんだ。数秘術も知らない無教養の彼でも身体的霊性に導かれてその数字を素数になるまで足していった。
「9だ」と彼。それを9回、宣言するのだ。
すると北北西の方角から映像が流れ始めた。
ずっと「スタンド・バイ・ミー」が流れている。
少年のジーンズの青色がきっと青空よりも眩しくて。
悪魔は最も普遍的な顔になって(まるで変化したように)ヨタヨタと映像に向かって歩き出して消えていった。
空間性は元々なかったのであるが、ここが暗黒化している事に気付いた。
耐え切れないほどの光の断罪を受けて彼の意識は破裂した。

アンナは永遠を見つめるような顔で窓際に座っている。
モンタージュ式に次の場面に切り替わる。
尻文字で「天体でフォークえぐっちゃってさあ」と描くアンナ。
白いもや、バターピーナッツ、黄身、雑草が撫ぜるような緑色の海。

護摩の炎から証人喚問者が出てきた。
全員が呆気にとられる事がないのは黙祷によるもので、この恐るべき双方にとっての別軸の交わりは安定をみせていた。
出生者となった彼はその場ではじめての登記を受ける。
親代わりの何がしかが耳打ちしたのである。
「お前はアンナだ」
(奇しくも彼は168㎝であった)
アンナはこの世界の住人となったので生命に関わる問題が即座に生じた。それはまず鏡像の問題であった。
念仏とその他、人間の異様な幕間が彼の最初の光景というわけだ。
アンナは虫の羽根を捥ぐようにその場の皆さん方の周りで好奇心旺盛である。
ピエロの顔を乱暴に、黙祷者の体を乱暴に。
当然にして護摩は強制的に終わった。
数人、死傷者の出る騒ぎとなったのであるが丸裸のアンナは男達に羽交い締めにされて表へ放り投げられた。
護摩の炎はその最中よりも勢いをまして”赤く”燃え上がっていた。

キスの流れで最高のセックスをした私は、それから頭のうしろで腕を組んで考え事をしていた。
それは主に最中の奇妙な事に関してであった。たしかに射精したのだが精液が出る圧を押し返されたような気がしたのだ。
まるでそれは自分が膣内に射精されたような感覚であった。
「しかし最高の夜だった」
隣のアンナを抱擁してわずかばかりの子供返りを。
気づくと眠っていたようで、昨夜の考え事の続きのようにして夢を思い返していた。
「アンナは丸裸で、168㎝で、それからスキンヘッドで。寺から出されて、階段を降りて、道路を渡ったところの教会で...」
おはよう、と彼女は向き直って私の頬にキスをした。

いつも通りのアンナだった。