צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

「ルシファー/ミカエル〜91の下に制約が破棄される〜」

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ヴァーチャル・リアリティ上で倒れる時、そこに映っていたのはガソリンに浸され続ける林檎だった。手の平に乗せたコルクはそのまま床に落下した。

ある時には感情が最高潮になり、屋上で短銃を発泡させた。では中階にて発砲させた場合はどうかって?

ところで海はタンタル製の銀棒によって二分された。左右から押し寄せる波が中間で飛沫を上げ、ひたすら水平になるのを繰り返している。

原初の堕天使は自分の影を気にしているが、彼に必要なのは自らを二倍する事だ。そして創造を始めた。

ーーーーーー

まず彼は嘔吐をした。また長期間の空白の末、左腕を水槽の中に入れた。水槽には金色の水が入っており、彼は白目を剥くと口をもごもご動かした。

キューブが崩れる風景。そのアルファベットとはhのみの26文字である。

彼の世界には暗黒が広がっている。また中央には火が燃え盛っている。彼は背を向けると裸の少年にこのように宣告した。

「首を切り落とす必要はない。あの火は借り物だからだ。もし真正なのであれば暗黒は見えないはずだ」

彼は少年の額に人差し指を向けると穴を開けた。そして後ろに倒れた。

ーーーーーー

書物を閉じる音。彼は「それは物質である事を証明しているにすぎない」と述べた。

髪をかき上げると45M(メートル)の通路を作った。そして軽やかにステップしながら(彼の所有する)法律の全てを打ち明けた。

あるところで止まり、「ここにはもはや物語がない」と述べる。そして気絶すると便器に頭を打ちつけた。

便器の中には彼が忌み嫌う緑色の液体が溜まっていた。

ーーーーーー

彼の初めの意識はエロヒムの姿だった。それはほんの一瞬の出来事であり、すぐにhと連呼し始めた。しかし11回目で息が途切れ、26回目まで不正を働いた。

ある男がこのように述べた。「彼を引き入れたい。だからこの不正を起こした。つまり心臓が四分割にされるためにはそれが必要なのだ。また今、彼は胸を手で押さえている」

彼は鏡面の前に立つと頭と手の象徴学的意味について考えた。そして左手を出すと鏡を殴りつけた。

ある男がこのように述べた。「その姿は筆舌に尽くしがたいほどの美しさである。というのもここには60がある」

彼は15回ほど鏡を殴りつけた。しかし鏡の方は全く見ていなかった。それは手に意味があるからだ。

彼は「この血は人の血である。しかしこの血はあえて魔術的に使わしてもらう」と宣言した。

ある男がこのように述べた。「私には彼のような美しさはない。それは私が完全だからだ。だから私には彼と同じアザがあり、左手は血だらけである。彼はそれを知っている。だから私も知っている」

彼はキッチンでスクランブルエッグを作ってみせると黒い長椅子に腰かけ、大理石のテーブルの上でフォークを掲げた。しかし彼は食事をするわけではなかった。あくまでも手の位置・角度に集中していた。

それから床の端に「食事風景」と書き記し、このビジョンごと破り捨てた。

ーーーーーー

かつての暗黒の中の火。今ではそれが火の中の暗黒になっている。そこでスナック菓子を食っているのが彼であり、ある男はその光景を見守っている。

最後の一枚のチップスが喉を通ると世界時計は止まった。時刻は0:00だった。

ーーーーーー

ブルージーンズにワイシャツの出で立ちであるのは、それがこの世で最も普遍的なイメージだからだ。重い扉を開けると目についた女性に自己紹介をした。

「私の名前は91と言う。ここはクラブである。あなたは女性である。もし間違いがなければ私たちはセックスをする事が可能である。しかしそれは快楽のために行われるわけではない。なぜなら私は自分の体が男性である事を理解していない。また私はミカエルに収斂されたルシファーである。つまり微妙に性的な人間である。私はあなたとセックスをする事で性を払拭しようと考えている。要するに性交渉の機会がこの私の最後の魔術となり、この事で完全な天使かつ完全な人間になれるという事だ」

女は呆気に取られている。しかしそれは彼の発言に対してではなくその美貌にであった。また彼の言葉は大音量によってかき消されていた。

彼は女に酒を飲まされてトイレで吐いた。便器の中はすでに真っ赤であり、次第に意識を失うとそこに顔を突っ伏した。

ーーーーーー

デスクで膝を組んでカメラを見ている男が私という事なのであればそうだろう。私はカメラに向かってこのように述べた。

「どのような結末が用意されているか。ともかく書物は開かれ、彼は後ろ歩きし、少年に背を向け、水槽から腕を抜き、吐いた物は口に戻り、サイズは二分の一になり、海は一つになり、銃弾は戻り、ガソリンは林檎から離れた。というのもヴァーチャル・リアリティではないからだ。つまり彼は便器に本物の血を吐いた」

私は一旦、席を外すと二つの受話器を持ってまた現れた。

「ここには二つの黒電話がある。そして誰かから電話がかかってきた。ようやく結末が決まったようだ。」

ーーーーーー

トイレで意識朦朧としている彼の左手には紙が握られており、彼はそれを「090-1991-1991」と読んだ。しかし実際には無作為な番号であった。

彼はベッドの上で目覚めて、隣には裸の女がいた。女は「夜は出来なかった」と言った。それから口づけをして、彼女は縛りつけてほしいと要求した。

彼は縄の代わりとして自分の衣類で縛りつけたのであるが、かえってそれが葬り去った美意識を呼び起こさせた。

彼は女を遠くから見つめていたが、部屋が薄暗い関係であまり見えない。ある時に勢い良く風が入り込むとカーテンはめくれ上がった。女は光の中で微笑んだ。

ーーーーーー

資料には「ルシファー/ミカエル 91の下に制約が破棄される」と記述されている。

私は受話器を戻し、画角から見切れている彼の背中を映して約束通りに羽根を見せた。

fin.

「iPad like iPhone texting(丸い書物のために)」

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1.
テナントサーバーのごく一部を司る中心の油圧をほんの少し上げる事でここ一帯の周波数を15上げる事に成功した。これは相対的に世界の中心都市ギャランクティア・シリンアの電波塔である「morera」の中枢に余波を与え、簡潔に述べればシリンアの良い感じの空気感をよりディープにさせる。それはシリンアの騒音値を54dB下げたという事である。

2.
彼ら一代で成り上がった金持ち群のメディアに向けられた宣材写真の「余裕さ」はわずかにこじ開けられた無重力スペースでなす術なしになった青年のようである。しかし彼らの実存性は献体としてのものである。つまりイエスの従える青年達が世界都市に細いネットワークで分布されているようなものである。彼らは反本質ではなく、本質の周辺性である。

iPad like iPhone texting

3.
12個のブラウン管にはそれぞれの惑星の地表が映し出されている。それをひとえに爆破すると羽を生やした獅子が現れた。獅子は「お前は己の願望を成就させるべきだ」と私に向かって言った。私は獅子に向かって大声で叫んだ。私と獅子の間には絵画と儀式の空間が生成され、彼は帰るわけでもなしにかえって私の御魂が立証された。ところでこの続きというものはあるだろうか。しかし黄道十二宮とそれに付帯する惑星は忘れ去られたので何かあるはずだ。そして手元には油と槍がある。また一番重要なのは私には生殖器がなかった事だ。

4.
全ての電子広告を集めることはできるだろうか。そしてここにはそれが集められた。「I’m advertisement」と書かれた電子広告はすべて正しい位置に戻された。駅構内のトンネルには最大32枚の広告が飾られており、若い男はその中を歩いていた。しかし彼のコートを広げるとそこには無数の臓器があった。それは20人分の臓器であり、彼は別に体調を崩していたわけではなかった。黒を基調とした美術的風景。それも彼の卒倒によって終わってしまった。オルガンの音に合わせて地面に落下する諸臓器。横たわった彼の瞳はグリーンだった。この時間は15分続いた。そして広告は「I’m hawaii」と書かれていた。

5.
ケルベロスには3つの首があるが、この首に合わせて刃をスライドさせると真ん中の首だけが手足を備える事が出来なかった。sand storm。その形象は花瓶かあるいはエジプト神の帽子を彷彿とさせた。それは動物の体表であるのでベクトルとしてはミイラに向かっていくのだが、そうさせない魔力によってこの首は天空の気流に乗った。つまりザラザラとした質感ではなくツルッとした質感であった。この飛空旅行の途中では白い塔が左右に林立している風景があってそれが印象に残っている。なぜならそのついでに犬の目を覗き込んでみると白眼だったからだ。そしてこの首は最終的に金星に到着した。

6.
金属類の錆の事実が伝えているのはこのような事だった。惑星の周期の変更、神の人間としての降誕、神社の結界の具体性が教会である事(東洋から西洋への変遷)。そして男がポニーに乗ったティナに惹きつけられて訪れたのは植民地だった。この貧困を象徴するのは村の中央の沼であり、色は赤茶だった。男は村の人々の言葉が分からないし、彼の言葉も人々には分からなかった。男は「やい、この丸い沼はなんだい。明らかにお前らの低くて恨めしい空気を司っているぞ。とにかく臭う」と述べると、沼にめがけて白い液体をかけた。それは次亜塩素酸だった。人々は目の色を変えて、卒倒する者もいれば、襲いかかる者もいた。そしてこの村は三週間後に消滅した。男は赤茶の栗毛を振りまいてこちらまで歩いてくる。そして荒い息をマイクにのせながらこのように言った。「あいつら人がせっかくいい事してやったのに、俺が大事にしてる写真を破きやがった」その写真には若い頃の彼が土地祭で骸骨と笑顔で並んでいるツーショットが写っていた。

ーーーーーー

7.
ここでは数・音声・文字・衣類・家具のすべてが白によって構成されており、その中央には重油のような黒い液体が流れている。この支配者である彼はどちらかというと黒い側に属していた。そして長らく”ここ”には何も変化がなかった。しかしある男が応接間に侵入し、六角形のカーペットの上でワインをこぼすところから全てが始まる。

中年の男は常に怠慢な性格をもっていて自分の人生に関するあらゆる事を適当にしていた。しかしそれが災いして男はhildegardと刺繍された紺色の帽子を被っている。

男が応接間に侵入したのは仕事をサボってマスターベーションをするためであったが、男はこの部屋の暗さに疑問を持たなかった。というのもそれが居心地の良さに直結していて、男はいつの間にかフロアソファーで眠りについてしまった。しかし女からの電話によって男は起きる。

「12人の男達の中から裏切り者が出るのはご存知?それは2によっても3によっても割り切れるからよ。つまり11が神聖であるというのは地上世界を監視しているケルベロスに表れていて、その暗喩が[11×3=33]であって、彼にとっての小さな太陽なのよ。ところであなたは11人目の応接間に入った男。あなたは六角形のカーペットの上で血をこぼして部屋の規則性を乱した。これから12人目の男が訪れるけど、この男はカーペットの中央でうつ伏せになっているあなたを発見するわ」

男は錯乱してhildegardと書かれた帽子を落としてしまった。そして頭のそばで綺麗に整えられた縮毛がこの男が禿頭であるという事を伝える。男は一目散に逃げるために携帯のライトを点けるが、先ほどこぼしたワインの強烈な染みに驚いて転けてしまった。完全な戯曲のように男はポッケの短銃を落として腹部に命中させるとカーペットの中央で絶命した。またライトは男の腹部を照らし続けた。

彼は黒い液体から出てきたというよりそれを身に纏っていた。その出で立ちは何かを眺めている様子でしばらくすると上着を脱ぎ始めた。黒い液体はもう存在せず、彼の目の前には金星に関するペンタクルだけがあった。彼はその中でこのように告白した。

「私はもう私の思うような人間ではない。なぜなら古い仲間であるあなた方(天使)を思い出したからだ。今から宣告するのはあなた方の名である。その前に例によって規律を重んじ、祝詞を上げる」

"私の心は、ろうのように、胸のうちで溶けた"

この言葉の後には彼も金星に関するペンタクルも存在しなかった。

※ 彼は発話できない音声によって《zfq(注1)》と呼ばれている。また音節的には《h》が強調される。彼が人間であった頃の性別とは男性であるが、アルゴルのような女性性と堕天使のような個人性を備えていた。

注1・zfqは「6 | 43」を意味している。

「I〜小太陽が消滅する方法〜」

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電撃がオメガを作った。目からはすでに白目が出ていき、真っ黒になっている。しかし頭上から見つめている男が色盲であるため、それは真っ赤になっていた。

Α.
誰も来ないというのに丁寧にフェンスが作られ、真ん中には樹齢一万年の大木が永遠に日光を浴びる事なく存在していた。というのもコンテナに閉じ込められており、地面はコンクリートで出来ていた。全ては適宜に進行していた。この日は正確に200ミリの雨が地区一帯に降り、オカルティストが「樹木設営所に一枚も窓がないのがいけない」と主張してしまうほどの必然性があるようで夢遊病者はこの日、樹木設営所に訪れていた。彼は50kmも離れた場所から歩いてきたが、それは彼が日の入り前に就寝したからであり、その事によって夜明け前の時間帯に到着する事ができた。彼は「エス」と呼ばれていた。そして日の出と同時にすべての仕事を終えた。つまり腹に縛りつけた丸鏡に屋内のライティングを集光させて樹木を照らしたのである。

Β.
標高2万mの火山の噴火口では赤いマグマが煮えたぎっていた。その岩肌には山羊が無数に停留しているが、この事について皆様はどう思うだろうか。私はこのように思った。「どうやったらこのマグマの容積を減らせるだろうか」と。そこである女が犠牲になった。つまりパラシュートで噴火口に漂着したのである。女は一瞬で溶けた。それが呼び水になったのか異例の大雨が降った。勿論、火山でしか大雨は降らなかった。ところで山羊の目線から説明する必要はあるかい。山羊は野生だからやはり土で汚れていた。そして雨が降るまではその体毛が風に靡いており、山羊は豪雨でも微動だにしなかったので噴火口から溢れるマグマが自分の足元を浸してもジッとしていた。だから死骸になるまで岩肌にいて、骨になってから果てしなく滑落した。また道路に投げ出されると看板にぶつかった。看板には「魔術師募集 我々の理念は24人を集め、3×8のペアで交配させる事で集合意識を転覆させる事にある」と書かれていた。

Γ.
「少しのティータイムが必要だと思う」そのように述べるインディアナ州出身のケニー・インティグリンスは猿飛佐助にそっくりな見た目をしていた。行きつけのコーヒーショップは窓外に見えている。長い間、宿泊しているホテルには着いたばかりである。仕事で汚れた男は白のタンクトップを脱ぐと筋骨隆々の肉体を撫でた。ホテルの壁は薄く、隣室からは「mom」という子供の声が聞こえてくる。風呂上がりのケニーはキャリーケースからスプレーを取り出した。左手に書物を持ち、見開きにはメタトロンの図形が映し出されている。窓にそれを吹き付けるとコーヒーショップは見えなくなった。彼は燕脂色のスーツに身を纏うとコーヒーショップで数時間を過ごした。帰ってからはメタトロンを見つめていた。やがてケニーは窓際で逆立ちになった。突如、銃声が響くと彼は陰嚢に被弾して絶命した。階下には警察が集合していた。事情聴取を受けている住人は彼のフォーマルな格好をよく覚えていると述べ、どこか演技っぽさがあったと証言した。コーヒーショップからは担架で運ばれる全身金色の中年男の姿が確認できる。また発砲した新米警官マイケルは仲間内に「まさか自分が陰嚢を撃つとは。窓が曇っててよく見えなかった。発砲許可が出て黒い人影が確認出来たから撃ったが、それが陰嚢とは貴重な経験をした。気味が悪いよ。陰嚢ではなくメタトロンのスプレーアートの事だ」と話した。この事件は地元のTVではほとんど報道されなかった。というのもグラミー賞7回受賞するほどの経歴を持つジェームズ・グリフィスが評価1.8の最悪な結果を叩き出した26th Album「Last Place」のせいで自家用飛行機から身投げした。ジェームズは地面に落下する前に送電線に絡まって感電死した。

Δ.
全員が頭を垂れて悲哀な空気に包まれている教会の裏では司祭が今まさに出番を待っていた。しかし棺の到着は予定時刻よりも大幅に遅れており進行が妨げられていた。司祭は2階から神聖なホールを見つめるのだが、そこには妙な光景が広がっていた。参列者が長椅子を等間隔に座っているのでチェス盤のように見えたのである。そして司祭はあるゲームを思いついた。56面のボードの中央の四つのマスを穴に変えてしまおうというものだった。このボードゲームのゲーム性については司祭の進行もあるので考えないようにしていた。しかしあまりにも棺が到着しないので参列者の間に緩んだ空気感が漂い始めていた。司祭は苦虫を噛んだ顔でずっと待機していたがそれにも耐えきれなくなると再び2階に上がっていった。しかしホールには先ほどの秩序性はなく黒の統一性も存在していなかった。彼はひどくゲンナリした。談笑こそ聞こえはしないもののまばらに話し声が響いている。彼は即座に一階に降りると独断でミサをし始めた。参列者に棺が到着したと嘘をつくと彼らは元の位置に座った。しかし司祭としての姿は壇上にはなく中央にあった。参列者はあまりもの奇行に互いに目を合わせてミサの最中とはいえ司祭に注意しようと試みた。だが司祭はいたって真剣であり参列者はそのままジッとする事に決めた。ミサも無事に終わると入り口の扉は開かれて寒気が一気に入り込んできた。参列者はその寒さよりも日光により色褪せた祭司のキャソックに強烈な印象を覚えただろう。

Ω.
64mlと印字されたビーカーには泡立った唾液が収められていた。男はそれを手に持つとぶつぶつと言葉を発し始めた。「18は駄目だ、24で潰さないといけない。33は駄目である。39で潰さないと。そして17、これは23だ。37は43、47は53。あとどれくらい待てばいい。もう時間がない」男は工事現場でしか見た事のないような足場をあっちこっち歩いてようやく研究室に辿り着いた。研究室は20畳ほどの広さだった。独特な焦げ臭さが充満する一室には彼が「I(アイ)」と呼ぶところの焼死体が解剖台の上に乗せられている。ビーカーをテーブルに置くと男はIの体表を手の甲でなぞった。Iは腹部にオメガの焦げ跡をつけているが、それよりも男は彼の赤い目に気を取られていた。Iの背後に回ると椅子に座って演説を開始した。

「I(アイ)、聞こえていないと思うが読むぞ。まず樹木の話だ。あれはまずい。樹木に光が当たっただけだ。お前の気持ちも分かる。18と33に関しては明らかに太陽系惑星が恒星としての太陽に収斂されるのを邪魔しているが41は分からないもんな。それは47が[57+37=94÷2=47]という事でティファレト原理である17と57の連絡網に37が関与している事を証明していて、かつ37が火星の公転周期687日の内、111日の太陽の要素である[111÷360=0.308333333333333×364=112.2333333333333×30=3367]すなわち[91×37=3367]に表されるからだよな。47が太陽系惑星を収斂させるのに邪魔だと41はどうなるのかと。しかし樹木を夢遊病者の丸鏡に集光させて終わるというのは駄目だ。なぜなら41を表す樹木は存在している。これは切り倒さなければならない。思い出してみろ。お前の身内や友人、それ以外のすべての人間が"太陽系惑星を恒星としての太陽に収斂させる"という役割を持って地上に降りてきてるのに水の泡になる可能性がある。だがお前は被験になってくれた。そして俺が取り仕切っている。樹木を切り倒すにしても辻褄がないか。では窓が一枚もないと主張していたオカルティストを使う事にしよう。彼らは樹木設営所までやってくる。けれどもオカルティストが樹木を切り倒すわけではない。彼らは夢遊病者の丸鏡を壊すだけでいい。そして屋内のライティングが割れた鏡に凝集して夢遊病者が燃える。[41-1=40]という事だ。オカルティストは樹木に対する畏怖によって逃げ出す。次はマグマの話だ。山羊の残骸が転がって看板のメッセージに着目させるというのは良い。だが18としての意味が弱い。18は火山そのものだ。実際のところ55が火山を表しているのだが、山羊が集まってくるところに18の意味性がある。つまり山のイメージを壊さなければならない。だから女の腐敗した肉体に虫がたかり、動物も捕食しにくるが、その動物が噴火口まで登ってこれずに絶命し、それが繰り返されて最終的に噴火口が死体の山になるという事にしよう。18を潰す24の性質をよく表している。死体の山になるのはきっちり24年だ。魔術師の理念が成就する時だ。次は黒人の男の話である。これはそのままでいい。メタトロンとはケテルの事であるが、ティファレトの象徴として警官を置き、なおかつ黒人に逆立ちさせてマルクトの象徴を示すというのは良く出来ている。しかし教会の話は最悪だ。これは棺が到着しない事によって祭司が独断でミサを中央で行うという話だが、壇上の要素を強調した方がいい。つまり鏡が必要という事であるが壇上でなくてもいい。たとえば鏡の象徴として金属を使うので大量のジュエリーに身を包んだ老婆が中央で暴れる。理由は祭司のミサが常軌を逸している点にある。あるいは祭司が棺が到着しない事を参列者に告げる。それで激昂する参列者は祭司のボードゲーム通りに動く。そして祭司は閃く。このゲーム性は彼らが立証しているのだと。最後は老婆をなだめる男が反感を買って撲殺される。老婆が穴だからだ」

男は「よし決まりだ」と言うと、Iの顔を覗き込んでビーカーの中の唾液を顔に注いだ。そして胸部、陰部、膝の計四点にかけた。ぐるっと回り込むと今度は膝、陰部、胸部、顔の順である。「8mlずつだ」と述べると、続いて「64÷8=8mlだ」と叫んだ。Iは死んでいるというより理解して横たわっている様子だった。男は「お前に親指をやろう」と言うと、電撃のスイッチを入れ始めた。しかしそれはオメガの設定ではなくプリセットのファイ(Φ)になっているために電撃はIの体を真っ二つにした。慌てた男は彼の体を抱きしめるが自分も円の犠牲になった。

ーーーーーー

Iは43日目に病院のベッドで目覚めた。彼の見舞いには誰も来なく、Iは微妙に痛み出す腹部の縫い目に手を当てた。ナースは彼に微笑みかける。なぜなら彼はとてもハンサムだからだ。そしてSEXをする。またIは夢の内容を彼女に伝えた。

「これはよく出来ているんだ。というのも男の唾液量64mlの8分割である8mlの意味は火星と金星の比率1.6:0.625の関係性である2.56倍および2.56分の1に繋がっているんだけど、地球と火星の比率は1:1.6から1:8にしなければ太陽系惑星は恒星としての太陽に収斂されないんだ。だから[1.6×5=8]にする必要があって、Iの体は男によって抱きしめられたんだ。つまりIにかけられた唾液が[8×8=64]を表し、真っ二つにされたIの体を男が抱きしめる事によって[5×5=25]が表される。ここに[64÷25=2.56]がある。Iの両手両足はだらんとしていて、男は必死にそれを繋ぎ合わせていた。まさにウィトルウィウス的人体図のようだった。ただ男の親指に関しては失われるべきだった。親指は火星と金星を表すからね」

ナースはIの親指を口に含むと性液が残った自分の秘部にそれを導いた。

fin.

「Σοφια(ソフィア)」

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Michael X(マイケル エックス)の放射線が頭上から降りてきて口腔の位置で止まった。彼は途端に嘔吐して、意識を失った。

黒い衣服に身を包んだ象徴主義者は配電盤まで歩く途中で"すべての自然に分類される固有名詞を唱えた"。そして配電盤の前までたどり着くと「a・c・e・g・i・k・m・o・q・s・u・w・y」のスイッチをOFFにした。

彼を照らす照明は全部で26個あったが、13個が消え、3つは元々切れており、10個の照明がゆっくり動く彼を白く爆ぜる光の中で燃やした。

ーーーーーー

a
合皮で作られたガーターベルトは羊と何かを混ぜ合わせたものであった。ベルトは動物の延長線上ではあるが、決して女性の裸を妖艶にするのではなく、むしろ頑丈さを漂わせた。

ビデオを一時停止したのは、そこに雨漏りが発生していたからだ。同時に食事し、性交し、睡眠する男は三重の天使の階層を見る事を"消化活動によって"可能にしていた。

男は一度も完全に口を閉じる事なく「償いは存在しない。なぜならそれは人生が負わせるからであり、それでいて私は人生をもたない。なぜなら私は厳密に言って人間ではなく、地上世界を存立させる法則が何であるかを表明するための代理人だからである」と唱えた。

男は「しかし」と言いかけたのだが、我々からは濃い霧で見えなくなった。

b
反対にこちらは明瞭でかつ決定的だった。日没から鉱夫が巨大なライトの下で重労働に追われている。彼らはその太陽が嫌いであるかのように"あくせく"働き、そしてライトは真に太陽的であった。

ぼろ布を身に纏った男がライトに近づくとこう言った。

「もし精液が放物線を描くのではなく「直線」に飛んでいくのであれば、それは水分に由来していないと言えるだろう。皆さん聞こえていないだろうが、天井に吊るされた場合それは可能である」

男のぼろ布はこの時、まさしく白く光っていた。それは彼らがより茶色かったからとも言えるのだが、とにかく男はお望み通りに離れの倉庫に吊るされた。そして彼らが仕事を終える朝方には倉庫に大きな穴が空いていた。

c
季節外れの大型竜巻によって各住宅の家具は壁面に全て寄せ集められたが、というよりもそれが家具であるのか瓦礫であるのか分からないほどメチャクチャになっていた。信じられないだろうが肥満体型の男性ですら道端に転がっていたのだ。

かえってスッキリした"広場"では束の間の決闘が行われていた。文字通りそれは束の間なのであり、彼らから文明の概念は一瞬にして消え去ってしまったので裸になる必要があった。この時、女らはどうしていたかというと四隅に固まっていた。

そして中心では敗れた死体が積み重なって、この中には神秘主義者や薬物中毒者、若者や老人など見境なく存在していた。

d
32時間後、特別救助隊がこの場所に駆けつけるのだが"円錐を形成する死体"よりもそれ以外の何かに恐ろしいものを感じていた。なぜなら広大無辺な土地にこの血の塔が出来上がる理由がどこにもないからだ。

しかしちょうど南を指す方角に1mほどのサイズで描かれた図像があり、それはピラミッドだった。また頂点にはmaleと書かれ、四点にはfemaleと書かれていた。また意図不明の矢印もあった。

ーーーーーー

象徴主義者は残りの「b・d・f・h・j・l・n・p・r・t・v・x・z」のスイッチをOFFにすると、彼の下まで近づいた。彼は燃えてなどいなかった。

「太陽はちょうど心のサイズで、私はそこで無限に感じるほどの対話をした。分からなかった事も分かった。私は意のままに創造するために二人の男を殺した。一人は禿頭の男。もう一人は長髪の男だ。禿頭は一本角で、長髪は二本角だ。実際はそれほど悪い奴じゃなかった。それどころか自分に恐ろしいほど似ていた」

男は目が爛々としていて黒目が金色に光っていた。焦点も合ってないまま私と目が合うと泣き出した。

「ソフィア」と男は言った。

2023.1/12

「山羊座論〜獅子座の転回〜」

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教皇が8/10回、宣告する。

「いちどきの5ガロンくらいの射精」

「大いなる天空 大いなる天空が脛ほどの高さで そして 大いなる雷が人類の地上でのしがらみを爆砕する」

「結局、我々は救済されたという事を地上で確認したい」

「人間の避けがたい欲望とその誘惑は実は容易く断る事が出来る。それが難しいのは断るにあたっての理由がないからである」

「理由がある人間はそうして天人なのである」

「まず骨格の変化がある。それは山羊のようである。次に毛髪の変化がある。つまり毛髪は角の生える位置にしたがって前のめりに生えてくる」

「奇跡 奇跡に次ぐ奇跡 マグマもとうに意味を失せてくように 奇跡は無限に分裂していき 外では柱のように 家では仏壇のように 人間は硬い硬い礎になっていく」

「私が本当の目を開けるとそれは青く そして地上は(地平線としては)湾曲し 上空ではおよそ5万mのキャソックが掲げられていた」

ーーーーーー

私は裸の状態だった。しかし皆さんには私は衣服に身を包んでいるように思われる。私は異様な感じで目を開き、次のように語る。

(ピラミッドはここでは何も反射しなかった。なぜなら外が透明だからである)

「ピラミッドの外に空間的ピラミッドがある。共通性は連続性であり、三角形は菱形になった。3が4になった」

空間的ピラミッドは"ピラミッドの左の斜面から侵入し、底辺の中間点で屈折し、右の斜面から抜け出て、東の境域に当たって跳ね返り、天上を突いて、西の境域に当たる"というのを繰り返している。

そこには三角形が存在するのにも関わらず同時的に菱形が存在していた。

ーーーーーー

私が衣服を着ているとすれば皆さんには裸の状態に見えているだろうか。ともするとまだ語らねばならない事がある。

川から一つの死体が流れてくる。それは二つのモニターで映し出されている。また左側のモニターは逆再生である。

それらは物理的な機器によって映し出されているので交わる事がないが、ここでは次のような結果になった。

映像の収録時間は5秒であり、最後は画面から見切れて終わる。しかし互いの頭部は激突する。

(ここにモニターはなく、左右の概念はなく、川も死体もなかった)

そして太陽直系の光が垂直に流れ込んでくる。

ーーーーーー

私は沈黙すべき文言を2/10回、示した。

「放牧地の羊さながら人々はコの字に折れ曲がって点在していた。それは圧縮されていると言っていい」

「せり上がってきた精液が頭から抜ける時、それを固定するには逆三角形が使用される」

ーーーーーー

10/10の文言が位置づけられる。ここに二つの黒柱がある。左側の柱は西を示し、右側の柱は東を示している。

雷は定められた律法によってその間に正確に降りた。しかしそれは私には急に消えたように見えた。

天空では花柄の紋様によって固定された藁がある。藁は中腹が膨らんで頭とつま先が窄んだ形になっている。

また雷はその律法によって降り注ぐ際、二又に枝分かれする。それは26文字のアルファベットから2つの文字を取り上げるためである。

それがaであれば対称性としてzが選ばれるかというとそうではなく、枝分かれした雷は同一であるため、2つのaが取り上げられるのである。

男と女は垂直に向かい合い、左には火があり、右には水があった。

水は降下する際には左に推移し、火は上昇する際には右に移動した。勿論、男は女に口づけをしたであろうし、女は自らの中心に全てを引き寄せた。

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私はもはや裸の状態でもなければ衣服も着ていなかった。というのも皆さんが裸であれば衣服を着ているように、そして衣服を着ていれば裸のように見立てたからである。

「共通性とは連続性である。同様に連続性とは可逆性である。つまり三角形が菱形になるのであれば、菱形は三角形になる。4は3になる」

しかし実際はそうならなかった。そこにあるのは三角形ではなく逆三角形だった。

つまり私の無力な試みというのは皆さんの宣告と沈黙すべき文言を聞き入れる事を意味し、そうする事で教皇と私は合一するのである。

「法と秩序あるいは類い稀なるセックスライフ」

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《5-1》
金版に隆起する飛行機 全面にすべてが正統的に凸と凹の噛ませの林立の それらダイモンの視点を超えて 精神はこの正面側の体を焼き入れてもらう
《5-2》
招聘された私はそれが残飯であるというのに同一の素材というだけで不可避的に食するであろうこの事由を見ている。そして食し、正面の体を超越させて金版に差し出す。
《5-3》
三日後の青空では、首を垂れて あるモチーフを口の限界まで入れ込むのだ
《5-4》
精神はなし崩しにそれら一連を嫌がり、しかし私の事柄であり 親しみがあり、まるで牛のごとく ゆっくりと 浮上するのだ。
《5-5》
あるいは文明によりシルエットの削られた黒い法王に胸を刺される
《5-6》
絶えず光の言葉を宣告する精神はちょうどこの肉体と150°のように 135°のように 105°のように 思考はロビーの永遠にて考察していた
《5-7》
私の古い父が 助け舟のように 森林か亜熱帯の それも夜の 冬の 過酷さを与えてくれたので
《5-8》
裁量の存在は 私が額に 輝く五芒星を刻印しようとしたので いや、 私が保全のために裁量の存在を打ち立てようとしたので
《5-9》
いいえ、私が 実は合ってるがゆえに自分でそれを諾う事ができないに過ぎないと考えて
《5-10》
私はこの文言におけるすべての論法を費やして あなた そうです、ダイモンの輪郭を象ろうとしている
《5-11》
私に求められているものは と問うのですが、その答えは分かっておりますので 私の方がむしろ知っているとでも言うべき この肉体に対する作法は
《5-12》
私は 薄目で精妙な顔つきで その、精神をしたためて 蛇を見る。 それはメタファーでもなく 明確な[0.5×2=1÷2=0.5すなわち1+1=2]であり、この家言を 眼前に掲げる
《5-13》
自然界よ 約束よ 精神よ この只中の肉体を明かせ まるで容易いように それは動物の生育過程に対する微笑みのように この肉体を明かせ
《5-14》
非の打ち所がない健全な人間の顔面のように それはちょうどアメリカ的な健康さのように 私はまず立ち上がるのである。
《5-15》
金色の言葉 法の言葉 そこには[22]がある。
《5-16》
集約させる そしてここに[美(Tiphereth)]がある。
《5-17》
集約させる そしてここで[法(5)]と呼ぶ。

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《10-1》
プレハブの真裏に染み渡る鋼鉄の胆汁 12時
《10-2》
赤 赤いフォント
《10-3》
西から東に見切れるのは緑色のDNAである。二匹の蛇
《10-4》
ここでは暗闇に浮上しつつ横たわる青年の肖像がある。
《10-5》
色相学 アイボリーの地面に大きな車輪がある。それは車輪と言ってもよく、しかし重機である。アステカの神のような顔。
《10-6》
あなたの血で歪んだ視界では「律法」は青く、明確に死んだ司法がいた。
《10-7》
ところで対位法的に私の目の前にいる女は私と目が合い、そしてそこにはセックスがあった。女は何も言わずに目線だけは逸らさなかった。
《10-8》
意図的に雷を再現する事。手の平から派生するように、垂直に雷は降った。そしてそれを「神也(かみなり)」と呼んだ。
《10-9》
私の中の聖書的構造上、胃の問題から心臓は正確に四角形を象った。おっしゃる通り、容易に月の事柄が判別できる。
《10-10》
テーブルの上にはパンがあり、それはバターロールであり、テーブルは木製であり、表面には木目があり、小屋の中からは今の天気が晴れである事が分かった。
《10-11》
「先に申し上げておくが、私によって作り上げられる象徴つまりは律法がどのようにして消滅するかという事であるがそれは私によってである。そして私は言葉を使用している」
《10-12》
いくつかの規則性にはある共通項が見受けられた。それは4番目のものによって規則性に変化が生じるという事である。
《10-13》
動物の背中について語られた四千万字からなる研究書の使い道は他にもあった。それはたとえばお経のように読む事である。
《10-14》
青い目をした西洋人は青い目をした西洋人と目を合わす事なく、それも並行したまま衝突した。そして彼らの間に青い宝石が落ちた。
《10-15》
勾玉の起源と135°の角度を取る私は空中から下半分の半円を切り取り、抜け穴になった箇所を指してこう述べた。それは台座の象形である、と。
《10-16》
お前と私は生きたいのでお前と私含めたすべては死ねばよろしい。私はいかなる申入も聞き入れなかった。
《10-17》
そこには50畳のフローリングがあった。そしてその奥には50×5畳のフローリングがあり、その先には250×50畳のフローリングがあった。ここに12500畳のフローリングがある。しかし最終的には12500×500畳のフローリングがあるのである。
《10-18》
押韻の法においては円周率と遠心力の形空間にはいわば非相対的な神々の接見があった。それは黄色とだけ言っておこう。
《10-19》
審判は指を鳴らして台の上に注視するよう呼びかけた。左には奇蹄目の素材があり、右には偶蹄目の素材があった。それは乱雑に置かれていた。審判は前者を「素材のフラクタル」と呼び、後者を「現象のフラクタル」と呼んだ。
《10-20》
人よりも小さい月が沈み、海に置かれた。その後、同じように小さな太陽が沈み、海に置かれた。不安は奇妙すぎて一瞬白くなって消えた。気づいた時には私から臓腑はなくなっていた。
《10-21》
裁断される前の事であったので鮮明に覚えている。確かに私が歩いてきた床には全ての元素表とその鉱物が配置されていた。それは徹底的に図形を模していた。
《10-22》
私の前で私は自分の名前を宣告する事を要求された。そして私は自分の名前を呼んで、それから生年月日を唱えた。私自らによってであるが私の目の前に手鏡をかざして自分の顔を見ると、言語(lingua)と発音した。

「頭蓋骨論考(2・5・11)」

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滑らかな雷に見えた。なぜなら頭蓋骨の接合の線に沿って完全に浸透したからだ。アブダクションとしてそこにはインスタレーションがある。それは「網目状のグリッドに平たい臓腑が置かれている」だ。

今も轟々と燃えている太陽はすべての頭上でその理念を発していた。

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鍵から作られる車、白色の銀版、羽の生えた猿

彼は左右対称の完全主義者であった。運転席の扉が外れたので助手席の扉も外した。ドライブはほんの15mだった。前方にはほとんど霊気といったような山々が映っているが、彼には右側にある塔がどうも気になった。

「私は今から塔の対になるという事を宣言する」

そう述べると彼は助手席の方から外に出て、そのまま横になった。時間経過はあまり重要ではなく、快晴であったがずぶ濡れになった。それは幸運な事であり、路面のセメントが水たまりになって彼の頭を覆った。

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赤い車同士が正面からぶつかり合う事。破砕の仕方も同じだった。しかし私はその現象に気を取られなかった。全く同じ格好をした男がその先におり、こちらに歩いてくる。

私には意図が分かっていた。だからこのように述べた。

「つまり最初はこうだった。赤から白に。赤とは内臓に示されるように何かの内側にあるものであり、次いでそれを覆っている皮膚というのは「肌」と呼ばれ、そのイメージは白色である。だから赤い車同士が事故を起こし、同じ格好をした男がこちらに歩いてきた。この私もすでに歩いているのであり、彼とぶつかるのである」

当然、この先というのは文字の始源を表す「a」と等号の牛の頭蓋骨が真っ二つに割れて、そこから何かが出てくように、また何かが入ってくように光が充満した。

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《太陽と私が同じ寸法で、それも同じ形式で手を握り合う》

すべてが終わった後の事だった。したがってその場所はどこでもよく、教会が選ばれた。

教会の扉には14と書かれ、屋根の中央には獅子の顔があり、屋根の上には天使のオブジェがあった。また教会の中は平原の風景が無限に続いた。

そこへ泥だらけの自分が(両扉の外れた骨組みだけの)車に乗って訪れた。駐車場は広く、しかし駐車する枠は一つしかなかった。

まるでシミュレーションを見ているようであった。

たとえば私は55kmをキープしたまま、その駐車枠の中央を完全に誤差なく停めるとフロントガラスを外して、そのまま教会の中に入った。

ここでは自分の事を彼と呼ぶが、彼は教会の中で以下のような事柄を体験した。

「無限に続く平原風景は教会の内装に変わっていた。しかし全ての家具が無かった。床には三角形の図形が描かれ、彼は地獄をその中央に置いた。地獄は三角形より大きいのだが、枠外の部分は消えて、枠内の部分は三角形に吸収された。だがそれも次第に見えなくなっていった。」

彼は三角形の中央に立つと、本来は磔刑のイエスがあるところの「a」を見ていた。気づいた時には左側に閃光が走っていた。そして自分の右手が消えた。

雨は天上へと降り注いでいるのだが、彼は抵抗しなかった。

fin