צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

フォークダンス

朝、起き上がって薄荷水に足をとられて彼は盛大に転けた。私を見つめて充血した眼が私の目玉の裏へパンケーキ型に変形すると張り付いた。お互いに動けなくなった。けれども彼は起き上がり、こちらへ近づいてくる。私は「バイアス」と叫んだ。チラシの目玉にはー両親の名前が浮き上がってくる病気を直す薬!ーと銘打ってあり、私にはそれが何度も目に入り鬱陶しかった。彼は完全に近づききった。すると私の頭を鷲掴みにし、鉛を振り落とした感じで打った。カーテンは赤いので本当は青いのだろう。怒り散らす彼のこめかみの筋は隆起していて、私はマヨネーズを塗ってみたい衝動に駆られた。それをなだめる時間は、この修羅場には無い。彼は既に出刃庖丁を握ったところだ。私は体育座りをした。グリーンの洗剤と彼の振り落とした包丁の先とを交互に見てからに「おい!」と叫び返した。しかし無関係に私の額を突き、張ったように仰け反った。裂けて、めくれる。上がった痛みに頭すべてが波形をちらして螺旋状にのた回る。私が彼であったら続いて脇腹や背中などを刺すだろうが、彼は止まった。ので私は歯を食いしばりながら彼から出刃庖丁を強引に奪って、そのようにした。彼はーイギギギーという口の形と音を発した。しかし悶えるような柔らかさは感じ取れない。まるで煎餅を二つに割ったような実感であり、達成感がない。痙攣にも固さがある。だから私は追って、洗剤を彼に注いだのだろう。血と液がまざり合い、泡が立って彼はツチノコか。「君ぃ、遅刻か」なるメッセージのポスターを剥がすと長方形の穴へ、脚をかけた。きんきんに冷えた防空壕みたいだ。私は突き当たって脚を組み、線香を灯した。息つかずに位牌を握ると向きを返して脚をかけた。窓を割ったのは握られた方でなかった。彼が出刃庖丁を振り落としたのと同じように私は路面へ位牌を投げた。