צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

「ルシファー/ミカエル〜91の下に制約が破棄される〜」

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ヴァーチャル・リアリティ上で倒れる時、そこに映っていたのはガソリンに浸され続ける林檎だった。手の平に乗せたコルクはそのまま床に落下した。

ある時には感情が最高潮になり、屋上で短銃を発泡させた。では中階にて発砲させた場合はどうかって?

ところで海はタンタル製の銀棒によって二分された。左右から押し寄せる波が中間で飛沫を上げ、ひたすら水平になるのを繰り返している。

原初の堕天使は自分の影を気にしているが、彼に必要なのは自らを二倍する事だ。そして創造を始めた。

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まず彼は嘔吐をした。また長期間の空白の末、左腕を水槽の中に入れた。水槽には金色の水が入っており、彼は白目を剥くと口をもごもご動かした。

キューブが崩れる風景。そのアルファベットとはhのみの26文字である。

彼の世界には暗黒が広がっている。また中央には火が燃え盛っている。彼は背を向けると裸の少年にこのように宣告した。

「首を切り落とす必要はない。あの火は借り物だからだ。もし真正なのであれば暗黒は見えないはずだ」

彼は少年の額に人差し指を向けると穴を開けた。そして後ろに倒れた。

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書物を閉じる音。彼は「それは物質である事を証明しているにすぎない」と述べた。

髪をかき上げると45M(メートル)の通路を作った。そして軽やかにステップしながら(彼の所有する)法律の全てを打ち明けた。

あるところで止まり、「ここにはもはや物語がない」と述べる。そして気絶すると便器に頭を打ちつけた。

便器の中には彼が忌み嫌う緑色の液体が溜まっていた。

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彼の初めの意識はエロヒムの姿だった。それはほんの一瞬の出来事であり、すぐにhと連呼し始めた。しかし11回目で息が途切れ、26回目まで不正を働いた。

ある男がこのように述べた。「彼を引き入れたい。だからこの不正を起こした。つまり心臓が四分割にされるためにはそれが必要なのだ。また今、彼は胸を手で押さえている」

彼は鏡面の前に立つと頭と手の象徴学的意味について考えた。そして左手を出すと鏡を殴りつけた。

ある男がこのように述べた。「その姿は筆舌に尽くしがたいほどの美しさである。というのもここには60がある」

彼は15回ほど鏡を殴りつけた。しかし鏡の方は全く見ていなかった。それは手に意味があるからだ。

彼は「この血は人の血である。しかしこの血はあえて魔術的に使わしてもらう」と宣言した。

ある男がこのように述べた。「私には彼のような美しさはない。それは私が完全だからだ。だから私には彼と同じアザがあり、左手は血だらけである。彼はそれを知っている。だから私も知っている」

彼はキッチンでスクランブルエッグを作ってみせると黒い長椅子に腰かけ、大理石のテーブルの上でフォークを掲げた。しかし彼は食事をするわけではなかった。あくまでも手の位置・角度に集中していた。

それから床の端に「食事風景」と書き記し、このビジョンごと破り捨てた。

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かつての暗黒の中の火。今ではそれが火の中の暗黒になっている。そこでスナック菓子を食っているのが彼であり、ある男はその光景を見守っている。

最後の一枚のチップスが喉を通ると世界時計は止まった。時刻は0:00だった。

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ブルージーンズにワイシャツの出で立ちであるのは、それがこの世で最も普遍的なイメージだからだ。重い扉を開けると目についた女性に自己紹介をした。

「私の名前は91と言う。ここはクラブである。あなたは女性である。もし間違いがなければ私たちはセックスをする事が可能である。しかしそれは快楽のために行われるわけではない。なぜなら私は自分の体が男性である事を理解していない。また私はミカエルに収斂されたルシファーである。つまり微妙に性的な人間である。私はあなたとセックスをする事で性を払拭しようと考えている。要するに性交渉の機会がこの私の最後の魔術となり、この事で完全な天使かつ完全な人間になれるという事だ」

女は呆気に取られている。しかしそれは彼の発言に対してではなくその美貌にであった。また彼の言葉は大音量によってかき消されていた。

彼は女に酒を飲まされてトイレで吐いた。便器の中はすでに真っ赤であり、次第に意識を失うとそこに顔を突っ伏した。

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デスクで膝を組んでカメラを見ている男が私という事なのであればそうだろう。私はカメラに向かってこのように述べた。

「どのような結末が用意されているか。ともかく書物は開かれ、彼は後ろ歩きし、少年に背を向け、水槽から腕を抜き、吐いた物は口に戻り、サイズは二分の一になり、海は一つになり、銃弾は戻り、ガソリンは林檎から離れた。というのもヴァーチャル・リアリティではないからだ。つまり彼は便器に本物の血を吐いた」

私は一旦、席を外すと二つの受話器を持ってまた現れた。

「ここには二つの黒電話がある。そして誰かから電話がかかってきた。ようやく結末が決まったようだ。」

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トイレで意識朦朧としている彼の左手には紙が握られており、彼はそれを「090-1991-1991」と読んだ。しかし実際には無作為な番号であった。

彼はベッドの上で目覚めて、隣には裸の女がいた。女は「夜は出来なかった」と言った。それから口づけをして、彼女は縛りつけてほしいと要求した。

彼は縄の代わりとして自分の衣類で縛りつけたのであるが、かえってそれが葬り去った美意識を呼び起こさせた。

彼は女を遠くから見つめていたが、部屋が薄暗い関係であまり見えない。ある時に勢い良く風が入り込むとカーテンはめくれ上がった。女は光の中で微笑んだ。

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資料には「ルシファー/ミカエル 91の下に制約が破棄される」と記述されている。

私は受話器を戻し、画角から見切れている彼の背中を映して約束通りに羽根を見せた。

fin.