צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

「I〜小太陽が消滅する方法〜」

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電撃がオメガを作った。目からはすでに白目が出ていき、真っ黒になっている。しかし頭上から見つめている男が色盲であるため、それは真っ赤になっていた。

Α.
誰も来ないというのに丁寧にフェンスが作られ、真ん中には樹齢一万年の大木が永遠に日光を浴びる事なく存在していた。というのもコンテナに閉じ込められており、地面はコンクリートで出来ていた。全ては適宜に進行していた。この日は正確に200ミリの雨が地区一帯に降り、オカルティストが「樹木設営所に一枚も窓がないのがいけない」と主張してしまうほどの必然性があるようで夢遊病者はこの日、樹木設営所に訪れていた。彼は50kmも離れた場所から歩いてきたが、それは彼が日の入り前に就寝したからであり、その事によって夜明け前の時間帯に到着する事ができた。彼は「エス」と呼ばれていた。そして日の出と同時にすべての仕事を終えた。つまり腹に縛りつけた丸鏡に屋内のライティングを集光させて樹木を照らしたのである。

Β.
標高2万mの火山の噴火口では赤いマグマが煮えたぎっていた。その岩肌には山羊が無数に停留しているが、この事について皆様はどう思うだろうか。私はこのように思った。「どうやったらこのマグマの容積を減らせるだろうか」と。そこである女が犠牲になった。つまりパラシュートで噴火口に漂着したのである。女は一瞬で溶けた。それが呼び水になったのか異例の大雨が降った。勿論、火山でしか大雨は降らなかった。ところで山羊の目線から説明する必要はあるかい。山羊は野生だからやはり土で汚れていた。そして雨が降るまではその体毛が風に靡いており、山羊は豪雨でも微動だにしなかったので噴火口から溢れるマグマが自分の足元を浸してもジッとしていた。だから死骸になるまで岩肌にいて、骨になってから果てしなく滑落した。また道路に投げ出されると看板にぶつかった。看板には「魔術師募集 我々の理念は24人を集め、3×8のペアで交配させる事で集合意識を転覆させる事にある」と書かれていた。

Γ.
「少しのティータイムが必要だと思う」そのように述べるインディアナ州出身のケニー・インティグリンスは猿飛佐助にそっくりな見た目をしていた。行きつけのコーヒーショップは窓外に見えている。長い間、宿泊しているホテルには着いたばかりである。仕事で汚れた男は白のタンクトップを脱ぐと筋骨隆々の肉体を撫でた。ホテルの壁は薄く、隣室からは「mom」という子供の声が聞こえてくる。風呂上がりのケニーはキャリーケースからスプレーを取り出した。左手に書物を持ち、見開きにはメタトロンの図形が映し出されている。窓にそれを吹き付けるとコーヒーショップは見えなくなった。彼は燕脂色のスーツに身を纏うとコーヒーショップで数時間を過ごした。帰ってからはメタトロンを見つめていた。やがてケニーは窓際で逆立ちになった。突如、銃声が響くと彼は陰嚢に被弾して絶命した。階下には警察が集合していた。事情聴取を受けている住人は彼のフォーマルな格好をよく覚えていると述べ、どこか演技っぽさがあったと証言した。コーヒーショップからは担架で運ばれる全身金色の中年男の姿が確認できる。また発砲した新米警官マイケルは仲間内に「まさか自分が陰嚢を撃つとは。窓が曇っててよく見えなかった。発砲許可が出て黒い人影が確認出来たから撃ったが、それが陰嚢とは貴重な経験をした。気味が悪いよ。陰嚢ではなくメタトロンのスプレーアートの事だ」と話した。この事件は地元のTVではほとんど報道されなかった。というのもグラミー賞7回受賞するほどの経歴を持つジェームズ・グリフィスが評価1.8の最悪な結果を叩き出した26th Album「Last Place」のせいで自家用飛行機から身投げした。ジェームズは地面に落下する前に送電線に絡まって感電死した。

Δ.
全員が頭を垂れて悲哀な空気に包まれている教会の裏では司祭が今まさに出番を待っていた。しかし棺の到着は予定時刻よりも大幅に遅れており進行が妨げられていた。司祭は2階から神聖なホールを見つめるのだが、そこには妙な光景が広がっていた。参列者が長椅子を等間隔に座っているのでチェス盤のように見えたのである。そして司祭はあるゲームを思いついた。56面のボードの中央の四つのマスを穴に変えてしまおうというものだった。このボードゲームのゲーム性については司祭の進行もあるので考えないようにしていた。しかしあまりにも棺が到着しないので参列者の間に緩んだ空気感が漂い始めていた。司祭は苦虫を噛んだ顔でずっと待機していたがそれにも耐えきれなくなると再び2階に上がっていった。しかしホールには先ほどの秩序性はなく黒の統一性も存在していなかった。彼はひどくゲンナリした。談笑こそ聞こえはしないもののまばらに話し声が響いている。彼は即座に一階に降りると独断でミサをし始めた。参列者に棺が到着したと嘘をつくと彼らは元の位置に座った。しかし司祭としての姿は壇上にはなく中央にあった。参列者はあまりもの奇行に互いに目を合わせてミサの最中とはいえ司祭に注意しようと試みた。だが司祭はいたって真剣であり参列者はそのままジッとする事に決めた。ミサも無事に終わると入り口の扉は開かれて寒気が一気に入り込んできた。参列者はその寒さよりも日光により色褪せた祭司のキャソックに強烈な印象を覚えただろう。

Ω.
64mlと印字されたビーカーには泡立った唾液が収められていた。男はそれを手に持つとぶつぶつと言葉を発し始めた。「18は駄目だ、24で潰さないといけない。33は駄目である。39で潰さないと。そして17、これは23だ。37は43、47は53。あとどれくらい待てばいい。もう時間がない」男は工事現場でしか見た事のないような足場をあっちこっち歩いてようやく研究室に辿り着いた。研究室は20畳ほどの広さだった。独特な焦げ臭さが充満する一室には彼が「I(アイ)」と呼ぶところの焼死体が解剖台の上に乗せられている。ビーカーをテーブルに置くと男はIの体表を手の甲でなぞった。Iは腹部にオメガの焦げ跡をつけているが、それよりも男は彼の赤い目に気を取られていた。Iの背後に回ると椅子に座って演説を開始した。

「I(アイ)、聞こえていないと思うが読むぞ。まず樹木の話だ。あれはまずい。樹木に光が当たっただけだ。お前の気持ちも分かる。18と33に関しては明らかに太陽系惑星が恒星としての太陽に収斂されるのを邪魔しているが41は分からないもんな。それは47が[57+37=94÷2=47]という事でティファレト原理である17と57の連絡網に37が関与している事を証明していて、かつ37が火星の公転周期687日の内、111日の太陽の要素である[111÷360=0.308333333333333×364=112.2333333333333×30=3367]すなわち[91×37=3367]に表されるからだよな。47が太陽系惑星を収斂させるのに邪魔だと41はどうなるのかと。しかし樹木を夢遊病者の丸鏡に集光させて終わるというのは駄目だ。なぜなら41を表す樹木は存在している。これは切り倒さなければならない。思い出してみろ。お前の身内や友人、それ以外のすべての人間が"太陽系惑星を恒星としての太陽に収斂させる"という役割を持って地上に降りてきてるのに水の泡になる可能性がある。だがお前は被験になってくれた。そして俺が取り仕切っている。樹木を切り倒すにしても辻褄がないか。では窓が一枚もないと主張していたオカルティストを使う事にしよう。彼らは樹木設営所までやってくる。けれどもオカルティストが樹木を切り倒すわけではない。彼らは夢遊病者の丸鏡を壊すだけでいい。そして屋内のライティングが割れた鏡に凝集して夢遊病者が燃える。[41-1=40]という事だ。オカルティストは樹木に対する畏怖によって逃げ出す。次はマグマの話だ。山羊の残骸が転がって看板のメッセージに着目させるというのは良い。だが18としての意味が弱い。18は火山そのものだ。実際のところ55が火山を表しているのだが、山羊が集まってくるところに18の意味性がある。つまり山のイメージを壊さなければならない。だから女の腐敗した肉体に虫がたかり、動物も捕食しにくるが、その動物が噴火口まで登ってこれずに絶命し、それが繰り返されて最終的に噴火口が死体の山になるという事にしよう。18を潰す24の性質をよく表している。死体の山になるのはきっちり24年だ。魔術師の理念が成就する時だ。次は黒人の男の話である。これはそのままでいい。メタトロンとはケテルの事であるが、ティファレトの象徴として警官を置き、なおかつ黒人に逆立ちさせてマルクトの象徴を示すというのは良く出来ている。しかし教会の話は最悪だ。これは棺が到着しない事によって祭司が独断でミサを中央で行うという話だが、壇上の要素を強調した方がいい。つまり鏡が必要という事であるが壇上でなくてもいい。たとえば鏡の象徴として金属を使うので大量のジュエリーに身を包んだ老婆が中央で暴れる。理由は祭司のミサが常軌を逸している点にある。あるいは祭司が棺が到着しない事を参列者に告げる。それで激昂する参列者は祭司のボードゲーム通りに動く。そして祭司は閃く。このゲーム性は彼らが立証しているのだと。最後は老婆をなだめる男が反感を買って撲殺される。老婆が穴だからだ」

男は「よし決まりだ」と言うと、Iの顔を覗き込んでビーカーの中の唾液を顔に注いだ。そして胸部、陰部、膝の計四点にかけた。ぐるっと回り込むと今度は膝、陰部、胸部、顔の順である。「8mlずつだ」と述べると、続いて「64÷8=8mlだ」と叫んだ。Iは死んでいるというより理解して横たわっている様子だった。男は「お前に親指をやろう」と言うと、電撃のスイッチを入れ始めた。しかしそれはオメガの設定ではなくプリセットのファイ(Φ)になっているために電撃はIの体を真っ二つにした。慌てた男は彼の体を抱きしめるが自分も円の犠牲になった。

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Iは43日目に病院のベッドで目覚めた。彼の見舞いには誰も来なく、Iは微妙に痛み出す腹部の縫い目に手を当てた。ナースは彼に微笑みかける。なぜなら彼はとてもハンサムだからだ。そしてSEXをする。またIは夢の内容を彼女に伝えた。

「これはよく出来ているんだ。というのも男の唾液量64mlの8分割である8mlの意味は火星と金星の比率1.6:0.625の関係性である2.56倍および2.56分の1に繋がっているんだけど、地球と火星の比率は1:1.6から1:8にしなければ太陽系惑星は恒星としての太陽に収斂されないんだ。だから[1.6×5=8]にする必要があって、Iの体は男によって抱きしめられたんだ。つまりIにかけられた唾液が[8×8=64]を表し、真っ二つにされたIの体を男が抱きしめる事によって[5×5=25]が表される。ここに[64÷25=2.56]がある。Iの両手両足はだらんとしていて、男は必死にそれを繋ぎ合わせていた。まさにウィトルウィウス的人体図のようだった。ただ男の親指に関しては失われるべきだった。親指は火星と金星を表すからね」

ナースはIの親指を口に含むと性液が残った自分の秘部にそれを導いた。

fin.