צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

ながい車座

数年前、何かで村人全員を撲殺した人間が刑期を終えて出所してきた。

日差しに告発されて、実に色っぽい白痴のような顔をしていた。

彼は長年の友人であり、あの忌まわしく奇妙な出来事があってからは

不通であった。

私は自らの身元不明なしこりについて考えていた折、彼を一番に迎えに

行きたいと思っていたのだ。

その出来事というものから話し始めてもいいではないか。

あれは年もそこそこに古いつきあいがほとんど集って興じていた時のことだ。

夏も十全に、土用を終えて、これから秋へさしかかろうという頃であった。

私らはあるだけの地球儀を破壊した。

それから儀の素材に苛立って、私らは殴り合った。

私はそれを本来的な性交渉のように感じた。

暴力のまつりごともそこそこにふと、互いに見合わせた。

満場一致で勃起していたのだ。

しかし私らはその場で組み伏せる事なく街へ繰り出した。

たぎり鈍麻した陰茎の硬直に又、興奮しながら早足になる。

狙いは誰でもよかった。自販機で膣が売られておれば、それで済んだような

気もした。

そこへ何だか冴えない女衆が角を曲がってあらわれては、まさしく

そちらの方から私らを引き寄せたのだと思ったのだ。

又、そのどん臭さに腹が立った。

勢いよく駆けていき先ず、殴打した。

みちっ、といった感じで崩折れて私は若さだけはあるのだなと思った。

誰の目から見ても女らは肥えていた。

その醜さからいつも以上に力が入って空転することもしばしばであった。

むせ返る口臭と鈍いうなりに急かされて、私らは手短にのした。

地に伏せてからも丹念に、腹部へ拳を入れる。

肋のおれる音が聞こえてはじめて、やり過ぎたと我に返った。

皮を引き剥がすようにして衣類をとり、股を開場する。

依然としていきり立っていた陰茎が一つ、ぴくんと動いた。

そうして私らは猿も早々に超えて、動物の実感をもった。

時間にして早いように思われた。

女らはこの世の終りのような顔つきで、口をパクパクさせていた。

一人が「唖者になったら困るな」と言った。

うしろに居た奴と顔を見合わせて彼へ

「その逆。むしろ自殺へ導いてやってよかったろうが」と言った。

合点のいかないような感じで「それなら苦しまずに済んでやれよ」と彼。

それもそうだ、と私らは手近にあるよく分からないもので叩きまくった。

顔を鬼の如き足蹴にし、上体を切り取るような感じで。

「これじゃあ、家畜だな」と一人が。

たしかに子産みは家畜産業に過ぎない。

愛玩の気が入るだけで何重にもタチが悪い。

「生命にかかわる、人手の足らない時代じゃあるまいしな」と私

欲望の意地汚い実現化。

「その割を食った豚を殺していくのが俺らさね」

法に触れるまでに敬虔な俺らはその手に力が入った。

一人が私に投げかける。

「おい、警官が親だったらそいつの子供を殺してやろう」

「だいいち警官は来ないさ」

真っ二つにちぎれた女衆の束を見つめながら背後に寒いものを感じた。

振り返るといきり立った陰茎をそのままに直立不動としている

奇妙な出来事の主役であった。

彼の顔は真空に魅入られたような感じで、全身を小刻みに揺らしている。

私はそれとなく局所的な裁断が執り行われているのであろうと感じた。

気のきかない何人かが彼のもとへ歩み寄っては体を揺すったり

好奇心たっぷりに声がけをしている。

すると、ものの数秒で彼は絶叫してどこかへ去ってしまった。

私らは肉の山を一瞥して、帰途についた。

明け方、連なるようにしてそれぞれ、重たくも起きたが

どうやら私らは大人数と雑魚寝をしていたようであった。

やけに溌剌とした村人殺しが、生首の調子を整えていたのだ。

一人が何を撫でているのか彼に聞いても返事はなく次第に

事の成り行きが掴めたようであった。

全員して叫び散らし、端の方へ退いて慄然とした。

すると彼は「お前らの言っていた意味が分かったよ」と目配せしながら言った。

応えも待たずに「今日はやらないのか?」と彼。

そのあとからは互いにあまり記憶にないのだ。

日も経たないうちに彼は砦の人となり

私らは停ったように幾年も時間を浪費した。

 

誰も迎えに行くはずはないと考えながら、刑務所へと向かっている。

同じような秋口であり、特になんの変哲もない移ろいを感じていた。

目的の場所へ到着すると、そこには仲間全員が一言も発さないような

感じで固まっていた。

緩慢な感じで扉があき、手続きが済み、小さな門があき

彼の姿がすぐさま大きくなってくる。

まるで吸い込まれるようにして彼は私らのもとに来てこう言った。

「続きやろうか」

私らはうなだれながら、彼に続いた。