צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

食欲旺盛は勝利のAKASHI

鼻をかんだ。痛かった。月一の特市(ここら一帯の野菜セール)・警笛

ブラックミュージックのかかりそうな足取りの買い出し帰り、その老人団体に出くわす。

活き活きとした顔の老人らはそれぞれが食べ歩きに適した野菜を片手に花を咲かす。

互いの人生をたたえ合うように顔を投げ合って、物を噛む音が私の耳に飛んでくる。

これは傍から見ても 異常な光景 だ。

淫靡な朝方の繁華街をされど二、三十人でゾロゾロとさあ...

しかも胡瓜とかトマトとか齧って!

これは現代マフィアのあり方なのだろうか。

さしづめ私はヤクの常習犯?

まさか!と思うも束の間、私は老人の束めがけ駆け寄っていた。

大きな声は印象に良い。

「それはなにを食べてるんですかぁ!」

ビクッとした老人達は一斉に大声で名前を叫んで、それでいてクロストークして

いて何も理解できない。

私は「意味がわからない」と咄嗟に口をついて出てしまい、老人からのリンチに

見舞われてしまった。

緑黄色野菜で飾られた私を見て欲しい。

「あれは良い野菜なはずだぁ」

私も立派なアイドル根性丸出し(ここで舌を出しました)

指差す人間発見。

そいつは「おいおい」と漏らしながらヨタヨタと何かの葬列めがけて近寄りだす。

横たわった自らの上体だけを起こし、その実態を確認したい。

「おい、起こしてくれ」

「なんだその、酷い状態は」

いいから上体を起こしてくれよ、と気が急くのを抑えて理由を話す。

私はどんな顔なんだい......教えてくれよ

そう、なんと葬列ではなくそれはさっきの老人団体!(まいったね)

起こしてくれた若者は私が話した一部始終で火がついたのか、そそくさと

団体めがけて走っていってしまった。

「リンチにあう事、必須だぞ」

次第に人も現れはじめて、これはなんていうかいいムードなんだ。

本格的に陽が上り始めて、犬猫なんでもありの賑やかな 朝だよ!

お、若者は着いたか?(視力が悪い)

四方八方、言葉尻だけの燃えカスしか聞き取れなくてどんな状態なんだい

もういよいよ身体もキツいからまた横たわって聴覚のみに集中することにした。

自販機から" 当たり "のBGMが聴こえてくる。無意味にメロディアスでこれも

またハッピーな気分だ。

私はニンマリとして、美味しい空気を吸う。

群衆といった方がいい足音。私を横切って......あれは逃げ足じゃあないのか!

一、二、四、八人と!戦争かよ!

仰天ついでで完全に立った!

一気に血が巡るのを感じ、バタバタとこの騒動の中心まで駆け寄った

人をかき分けて、おい若者なにをしたんだ、どいてくれ

少し拍車がかって、中心に投げ出された。

何かを踏んでしまったようだった。

見下ろせばそいつは老婆の安らかな顔。

すぐ近くに団体分の死体の山があった。

呆気にとられて、放心するよりないので私に見続けられる死体の山

集ったヤジも無言で、この奇怪な光景を見ることに終始し続けているのだろう

私もその頃にはある程度、心を持ち直して色々な考えが出来るようになっていた。

すると一つの疑問に行き着いた。

さっきの若者はどこに消えた? 団体が死体なら、あいつは殺人じゃないか?

消えたならヤジも、追いかけるとか 感想を言い合うとかあるだろ。

それでこの無言。

無為にヤジの円の外から沿って歩いてみたりして。

あいつは撲殺したのか? よく考えてみたら私の顔はすごい事になっているはずなのに

誰も注視しない。

ふと顔をさわってみる。ない、なんともない。

小首かしげたところで、この状況をそっくりそのまま受け入れるしかない。

気づけば少し離れたところにある歩道で消えた若者の死体がいくつもあったが、そんな事はどうでもいい。

腹が減ったから牛丼を食べに行きたい

顔もなんともないから公衆便所で洗う必要もない

しかも不思議と晴れやかな気分なんだ。

邪魔しないでくれ。

そんなに気になるなら、自分であの人だかりに混じって死体の山を確認すればいいだろう?

だけどそこにはなんにも無いんだ

今から牛丼を食べに向かう私以外には。