手でクエを大竹は象った。
「シースチョン?」と私へ伝える。
(ここでくぐもったチープな世界。大竹のフロッグコートは解れている)
大竹「二度と行かない」
自らの氏名を発したのは私だ
壁掛けの遊具であった寅年生まれの多い部屋が分解されている。
大竹は円筒を両手に掲げ、その場で回転する。
キメラ性の強い菓子 を二人は見ていたが二人して井戸掘りをしていた為に....
大竹「シンクロやで!」
私「女(にょ)は未だいる」
96年八月頭 義足の男が懸命に駆けている映像の語だけトリミングされたー銃がなっている気をつけろーが甲高く何度も繰り返されている
粘度プラス恐竜の玩具 キューピー破片の学生が無秩序に口からハンバーガーを吐き出す
半紙 題: 新品
病気を囲む会が取り押さえられて、全員が容疑者の膵臓の中へ入っていく。
ブラウン管の積み上げられた圧巻の層は壁へ密に設置されている。
誰もが口を揃えてー何だここはーと顔を上げて見据えている。
なんとそこに映写されていたのは消費された恋愛ドラマの群像だ
病気を囲む会幹事の中村は思わずー恋ーと叫んでしまう。
茫然自失な中村を差し置いて一番若い田村はその一連ですぐ裸踊りにとりかかった。
残りの会員はドロドロに溶けて田村と中村の異様な光景がそこにはある。
大竹と私は容疑者の趣向を洗いつつも、田村と中村が溶けないように話の接穂を
絶え間なく探し続ける。
大竹はもう痺れが全身にきたし「名前を聞いちゃ駄目か」と耳打ちした
私は「名前を聞いたら大竹と田村が溶ける」と
大竹「俺が溶けるのか?」
私は全身に痺れをきたした大竹の肩に手を置くと耳打ちした
「大竹ではない。中村が溶ける」
大竹は今にも膝、崩れそうだった。
私は再三、名前を聞いたら駄目だ、と中村に言った
容疑者は太陽の刺青に草を生やすのが目標らしい旨をなんとか田村に伝える
方法は無いのか。
私「それが田村の頭に入ればいいんだよ!」
容疑者も複雑な表情で懐柔の意がそこかしこから漏れ出してきていた。
私は心底困った。なぜならあと半日もしたら田村と中村も溶け、容疑者は壊死して
しまう。
1.私達は霊安室にいる。
2.膵臓の中の田村と中村は容疑者の体内にいるわけではない
大竹は携帯をとりだし自分のブログの来客数を見始めた
「96だ」
私はー何時だ、今はーと叫んだ
「20:16だ」と大竹
ポケットの中で小銭をかき混ぜ、一秒たりとも逃さぬよう容疑者の目を睨む
大竹はフックにかかった膵臓とフロッグコートを隠す
すると堰を切ったように容疑者は語りだした
1,カーテンは閉めなくていい旨
2.歴史に対する疑問
3.少女趣味
私は片手で容疑者の顔を包み、大竹がーもういいーと呻いた
その瞬間、容疑者は正座し大泣きしはじめた。
クレーターの肌を彼の涙が埋めていく。彼の長年の運動不足分の時間、彼は大泣きしている事を誰もがあの場にいたら悟るだろう。
ーああああああ、うああああーひとしきり丈を出し切った後に爽やかな顔で容疑者は
「小錦 剛士です、自分」と答えた。
すると小錦 剛士は煙を上げ溶け出して、膵臓が乾いた音で破裂した。
ぶぉん、と飛び出してきた田村と中村は眼球が増える思いで驚愕している。
溶けきり今や小錦の形骸は一つの手鏡。
号泣している田村と中村を横切り竹中はその形見を覗き込む。
私は田村と中村の間に腰を下ろし、二人の鼓膜から微かに聴こえてくる恋愛ドラマの
木霊に息を潜めた。
竹中は愕然としていた。
竹中「俺が犯人?」
私「今、何と言った」
号泣の霊安室が外気へ触れる。竹中が扉をあけて走り去っていったからだ。
私は苛烈な連続で自らの生理反応を見逃していた。生殖器がブルブル奮って尿を
辺りへ撒き散らしている。
「もう涙か尿か分からない。ただの液体として意識を留めておこうよ」
私は田村と中村を起こすとーもう病気の会はやるなーと警告した
二人は逞しくなった。一つ頷くとー先輩、追いましょうーと私を置き去りに走り去っていってしまった
私は光の方角へ向かおうとしたのだが、無数の地縛霊のせいで前へ進めなかった。