צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

【「それはピカビア超えてるよ」】

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さあ100人目は誰だ。
時計台から落下するアイアンメイデンである。
学校裏のプールの底面にブラウン管があり、そこではチーズの溶解過程が映し出されていた。
大きな三角定規をかかえ疾走する光景。
風の煽りをうけて全てがめくれ上がった。
「チェスの駒を一つ進めるとき、その手や皺や動きが邪魔だと思わないか?」
ーもし君が幸福に見舞われたとき、何か調和をもとうとするならー
それで推し進めてみよう。
(それで進めろ!)
まず何かの信仰宗教の行列が行進する。
ーそれで?ー
「そこで巨大なツナ缶である」
リベラルの歯列矯正がズレるように、あるいは歯が木目のように汚れるように。
落胆が起こったのである。
(我々は"巨大なもの"が好きか?)
プールサイドで紫の夕刻に伴いながら狼狽しているのが私である。
「ブラウン管が映し出してるものは違う。それだけは分かっている」
ニッセン雑誌をギャルが読むところの四角形の情念はどこにも行けない。
ただ哀れな人々がマイニングするだけである。
サイコキネシス。もやしのような寄生虫の飛行。
思い出したのである。
「ブラウン管では98年ベラルーシで催されたリレー競技が映し出されている」
ー国旗とサラダは似てないか?ー
チェスの駒が人間の手を動かすとき、AIが口から子宮口をボロボロ吐いた。
日曜日。男女三組が公園にピクニックへやってきた。弁当を広げる。
「いただきまあす」
その瞬間に全員がロボットの頭部を下痢のように吐いた。
火曜日。男女三組が公園にピクニックへやってきた。弁当を広げる。
「いただきまあす」
その瞬間に全員がロボットの頭部を下痢のように吐いた。
戦車が白い排気ガスを出す。ストッキング・レースの黒薔薇が青空から滑落する。
奇病でふくれた魚の死骸を整頓する事。
(奇病による絶命はまるで死を回避しているみたいだ)
大きな口であるところの人間世界で《わたぱち》が弾けている。
咀嚼する事で、噛み合わせによって切断されるのは一体誰なんだ。

車通りと人通りの間の空間。縁石は方向的墓石である。そして命でないものの死に墓地はない。
方向的墓石であるので、死は生の変形である。
古い映画の褌(ふんどし)生地を指でこねるところの昼の二分割であるが、公私も青空を映せばただ一つなぎである。
黄金色のセメント。
概念にセメントを流し込むというのは?
あらゆる枠は陳列の予感である。
なにか納め、並ぶのであるから偏にするには《串》が必要である。
串と槍の違い。串と矢の違い。
串とは殺生であるか?串とは時間であるか?

「馬鹿じゃないの。水中でテレビが映るわけないじゃん」
ギャルはニッセン雑誌片手にプールサイドで狼狽する私に話しかけた。
「あなたが不法投棄したの?」
「馬鹿じゃないの。ギャルがニッセン雑誌を読むわけないじゃん」
「読んでないし」
「不法投棄してないし」
「空が紫だね」
「空は青いに決まってるだろ。紫色の時点であれは空じゃないよ」
ウマが合った我々は公園に繰り出した。
そこでは男女三組がまだ嘔吐しており、ギャルは写生しはじめた。
「デッサンは活劇じゃないよ。あれを描いても漫画だ」
私は連中にマッサージをした。
次第にロボットを吐くのも止まり、正気を取り戻しはじめた。
一人の男が「ありがとうございます。ずっと自分が吐くのを見ていました。だんだん山のようになっていくんで首が圧迫されて真上を見るような姿勢で辛かったです」と話した。
他の男女も同じような事を言って、私に爽やかな顔を投げかけた。
それがまるで新品みたいで、ロボットとは造られたものではなく"乗り越えた"ものなんだなと思った。
「ちょっと皆、集合写真みたいに一列になって」
ギャルの一言で互いに顔を見合わせ、少し照れ笑いを浮かべながら、肩を組んだり中腰になったりして並んだ。
ギャルの集中力は物凄く、モデルとしての務めは朝までかかった。
その間、誰も話す事が出来ず私は「きっと他の6人はさっきまでの嘔吐を思い起こしてるだろうな」と考えていた。
ヘトヘトのようでその場で倒れて眠る連中をよそに私は彼女の出来上がりを見に行った。
「デッサンになってないじゃないか」
そこにはニッセン下着ページに殴り書きされた四つん這いの嘔吐する6人と、さらにその上で丁寧に写生された笑顔の我々が描かれていた。
彼女は憤慨しながらページをちぎり、破いてしまった。

私が彼女であれば一列に並んだとき、それを横から串刺しにしただろうか?