צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

「令和#13」

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完全なる白い箱は次第に透明化していった。芽の周りで火花が散っているイメージ。黒い紋様が回転する空間で多種多様な動物の顎から首までの湾曲が映し出されている。水の下降原理に従って際限なく血は底辺に流れていった。人類の意識は「その先」をちゃんと捉えている。遠大で巨大な物質。白い箱の上にはヘブライ語で何かが書かれている。しかし今では透明になっており、この主の背景には膨大な数列が展開されている。指を伸ばしてみる。かつて換気口のプロペラに手を入れてみたくなった記憶。目の前に広がる数列世界にまさしく「私」は立っているのであり、そしてこの数字というものが生命である事を悟った…

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まずは翼が生えた犬がいた。血小板にはチェックがついており、壁にかかった南国の果実の絵が印象的である。このガブリエルに対置されるごく単純なビジョン。ちょうどその果実に見下ろされるくらいの高さにテーブルがあり我々が咳をするような間欠的な間隔で物語が進行した。ビーカーから殆ど黒に近い群青色の液体がこぼれた。それがテーブルに跳ねる時に液体は隕鉄になった。大気が固形である場合、重力はどのように表現されるだろうか。まさしく重力は審判の対象であった。

シュミレーションでは最終地に「eden」とだけ書かれていた。またこの仮想は私にとっての現実であった。時間は勝手に進み、私の運命も進行した。人間であるのだから肉体上の分節があるという事であり、またキリストの機会でもあった。つまり排泄・睡眠・食事・射精どの瞬間にも括弧付きのルビが振られている。死によっての腐敗過程でなくとも意識は炎上するようにめくれた。単調な描写でそのedenと書かれたゴールテープを見つめている。「私はまだ何も終えてないのに」と息を詰めながら、地獄のままそこへ行くのだろうか。しかしそれは住民になる事を意味するのではなく彼自身がシンボルになるという事であった。それは惑星になるとも言っていいだろう。

金星の場合。表面の曲線に爪を立て、引っ掻いてみると肘から折れた。銀河の中心から極小の物質が落下していく。それは鬼の顎であった。人間的にはその欠損部が星々のきらめきに見えるだろう。まさに金色なのだ。突然、光線が発射され、それがブラックホールに突入する。それはコンドームに対する陰茎のようであった。緑化する宇宙。その予感があった。微かに緑色に変化していた。光線はブラックホールの途中で消えた。陰茎は勃起を中止し収縮する分だけゴムとの差分を示した。しかし光線は消えてもブラックホールの中にいなかった。ただ金星が示されるだけだ。

我々は笑いたかった。常に垂直化させたかった。しかしそれは外部ではなかった。荒野の道路が反り返ってもそれは稜線に過ぎないのだ。つまり雨天は地に属さなかった。しかし水滴は地面に吸収された。笑いは意味内容に還元されるが「音」だけは分離していった。いや音とは初めから無関係なものなのである。

男はブラウン管を割った。四角形が二つの長方形になった。それらは元は一つであり、また機能していた頃、天体の周回する映像が映し出されていた。この出来事によって出窓に置かれていた砂時計は倒れた。彼はキッチンに行き、冷蔵庫を開けた。そして牛乳を取り、それを飲んだ。床を眺めた。吊り下げられていた幾つかの用具が落ちていた。流しの下は少し開いており、包丁が見えた。男は流しを遮蔽するちょっとした塀のステンレス製の縁から鉄球を掴み上げると投げる体勢に入った。しかし集合住宅であるのでそれを抑えた。彼は鉄球を真上に投げるという決断をした。最上階に住んでいたからだ。倒れた砂時計はさらに床に落下した。

霊山から紫色のカーテンが垂れ下がっている。そして女性のスカートに誂えられたレースは何調だろう。勢いよくたくし上げて鼠蹊部(そけいぶ)をつまんだ。天候は異常なくらい晴天だった。溜め池はやがて氷解していき、長らく精神がおかしかった人間が今ようやく家から出てきた。彼の足取りのその一歩一歩が快復するリズムを表し、おそらくほんの数歩で健全になっていた。大自然とアーチの絶妙な死角の中で彼は大の字になった。白いTシャツは脱がれていた。こんなにも太陽は一律に地上を照らしているというのにこの時だけは彼の心臓を照射していた。他の地上はとても暗くなった。

神殿に向かうまでの階段は13段あった。段とはなんであろうか。それは13から成り立つピラミッドを表している。つまりヒエラルキーである。段数・凹凸なのではなく階層・直線を表している。そんなわけで13パターンの神殿の経路があった。13パターンの内、8つを正八面体にするために使った。それを囲むのに残りの5つを使った。神殿はこの四角形と対称性をもつ事になった。なぜなら神殿とは階段を登る事でしか辿りつかないものであったからだ。

土臭い。まずそれが総合的な判断だった。私はいつかのあの天上の治療室にいる。雲の上の寝台に横たわって、すぐ真上の太陽が私の肉体を分解する。そして癒えない部分を焼く。しかしそのオペをするために横たわっているというわけでもなかった。まず寝台の上面が抜けた。すると四本の柱が立った。肛門の辺りが熱くなり、視界は真っ暗になった。一瞬、白飛びすると地中に埋まった神殿の映像が現れた。私の腹は太陽によって貫かれた。そして神殿の屋根にも穴が空いた。私にはある可能性が生じた。それは世界である事をやめ、人になる事を意味していた。私は最大限まで顔を力ませると首がなくなった。そして神殿から恒星が出てきた。