צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

【ミサのバイノーラル】

14階から落ちてそれぞれのカプセルホテルに緑の仁王が詰められた。クーリッシュの温度。
「検問所を知ってるかい?」
検問所では案の定、なにものにも使役されない怪鳥が猛り狂っていた。
(ランナーゴールイン)砂埃がすぐに警察官に変わります。
「ランナーゴールイン」
酒場では野球で底辺が盛り上がっていた。爆破。
どれぐらい掘れたのだろうか。
すり鉢を覗き込むと裸の青年が我が身を抱きしめて警戒していた。
「おーいそこで何をやっている」
「僕にも分からないんです」
そんなわけなかろうが、と彼のところまで降りていき説教をした。
「爆破はいい、普通の事だ。野球で、酒で盛り上がるなんてものは永遠に続くからだ。お前は違う。そのままだと餓死か凍え死ぬだろう」
青年は私の覇気を押し返さなければならない自衛本能があった。
爪で土を掻くとスレンダーなサンクチュアリが見えてきたではないか。
「包丁ってのはね熱を想像できないだろ。ほれ、みんさい。この大きな陰茎。外すよ。ただ取り外せるだけだ」
彼はもう地上へと出て行っていた。私は一夜をそこで過ごす…

実験室の台の上にはプラスチックの長い円筒があり、その中にはエリマキトカゲが入っていた。
人間の素手であらゆる赤身をミンチにするところの警官の第3チャクラ。
「低カルニチン予防第一!」
大きな声と共にそれぞれが胃薬の蓋を開けた。
シナモンの顆粒が硫黄の息吹で立ち消えた。
新米ポリスの声帯はカンチレバーのように頑丈で何の価値もなかった。
ドレミファソラシドの流感の如きその胃薬缶の中身の旨を発した。
ブロッコリーのレプリカでした!」
続いて「着物でした!」
「避雷針でした」と二世。
驚いたがその後の四人のは「スロットのリール!」
(骨折の音で"スロットのリール!")
実際にもドレミファソラシドの旋律は響いていた。
「お前らすべて赤身の外延系!」
私は天空に祈っていた。神よ、重力よと意外なる選択の《虎》の意気を借りて幾重もの雲を突き刺す!
「どうだ、俺の陰茎は。こんなもの虚数の役にも立ちゃしないただの微塵粉のスクラップだ」
握れ、と二世に。
「あったかいです」
私は電子レンジの角っこが二点曲がっていき交わるミュージック・ビデオを彼の頭上で放映した。
エンドロールのクレジットを記すように私の可愛い後輩の額を舐めていったのだ。

赤い車。赤いタイヤ。コマーシャルでは聖域の風景が延々と続いていた。
「今のところ停めてくれ。そこ、地雷で足吹っ飛ぶ瞬間の」
たしかにこれは世界地図と同じ位相だ。
自然体とはいえ立たなければならない。地面に対して力を加えなければ、ね!
「爆発というのは方向的にどのようなエネルギーなんだ」
私は頭をかきながら横目で司祭を射抜いた。
「むしろ君は教会になぜ監視システムを設えた。しかも私のこの家、そうだよこれは私の家だ。そこで君は墓守をするわけでもなく内戦地域の映像を見ているのかね」
司祭さん、と私。
「あれを見てください」
ヤニで汚れたスイッチを入れるが、この年季が私は嫌いだった。
「ちょちょ、まち。ソーセージ。あら、そして医療用メス5mの串刺し。刺されてない。生け花?」
「司祭さん、なぜ私の言ってる事が分かったんですか」
司祭は心臓発作でも起こしそうな目をしていた。まるでエスカルゴのような渦…
「単純にドラッグをやってるんだよ。分かるだろ。近寄って見てみなさい」
私は吸い込まれるのをギュッと胎児のように堪えて回避した。しかし司祭からはオーデコロンの匂いがしたんだ。
「名前はなんて言うの」
ケビンさ、と司祭は疎らな歯列を見せてくれた。
ついでに腹も掻っ捌いて臓物も流してくれた。
「ちょちょ、まち」
私は突如のネクロフィリア体験に意地汚くもコレクションしたい次第で彼の口腔に舌をねじ込んだ。
それは我々の歯周病を介した男の談合で、本当に宇宙は黄色かった。
この世にはじめて生じた水滴のように司祭の尿道から一滴の精液が落ちた。
私は慎重に臓腑の上に落ちて混じり合わないよう手のひらですくってその場を去った。

貧困ビジネスが社会情勢のうねりによって善行をしてるようであった。
まさしくミステリーサークルの陣形で安楽死ポッドが仮設されている。
もちろん色はホワイト。
中は簡素で点滴と寝台だけだ。
「死んだ体はどうするんですか」
「犬に食わせるんだよ」
永遠にエジプトの風が吹いているようであった。
私は犬による人間の食育を考えた。翼が生えるんだね…
「私も入っていいですか」
死ぬよ、と男は言った。
私は自らの手入れされた死の淵に対してどのような作法をもっていいかが分からなかったが下半身を裸にするのだけは確かなように思われた。
「これ開閉がジップなのはなぜですか。生理的に不快で私の理想形がすべて失われたのですが」
男は経済的に理に適ってるからというのが主な主張であった。使い捨てなどころか犬がこのポッドまで食ってしまうとはね。
F1が横切るようなコンマと震度2くらいの揺れで安楽死が済んだ。安楽死の現場に居合わせた。
男が生きてるのがとても不思議に思えた。
「なに黄疸つくってこっち見てるんだよ」と男
特別に彼じきじきに殺してくれるらしく背後に回って私の首を絞めた。
裸の太腿と男のデニムがこすれて私は嬌声まじりに「額で機械を食育したい」と…
男はテンガロンハットを外すと私の額に鉄パイプを刺した。
見事なオールバックに見とれながら意識をうしなうのだが、その慣性で前方にしなっていった右手が男をとらえ司祭の精液が弾けた。

セイエキハジケタ…… オトコ、オールバック……

ミサのバイノーラルが聴こえる。

ドレミファソラシド、ドシラソファミレドの旋律。

fin.

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