צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

「四位一体のための演繹法 〜キリスト化における無分節の回避〜」

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「だから言ったじゃないか。竜笛のまま押すなって」
男はソーパルメット畑の農夫だ。従業員は一人でその怒られているのが彼だ。林の入り口からは水銀のかぶった草花の凹凸が露わになっている。竜笛はノズル下部の小さなスイッチを切り替える事で円盤型になる。青い日の丸旗。
「寸劇をしている場合ではない。スリットが増えて干渉率が高くなる。再び戻してから円盤にしろ。どれ貸せ」
男は従業員を退かすと下着を脱いだ。そして陰茎を扱き始めた。
まさしく竜笛を戻すには性センターの慣性が必要だった。
傍らにいた従業員の様子がおかしくなっていた。
白目と黒目が反転している。また虚気に陥り、怒り狂って消耗している。
結果的には竜笛は水銀の上に落ちた。
彼らは根本からの改変を迫られた。男は従業員のタスクを引きちぎるとスリットに入り込んだ。

転送先はスーパーマーケットだった。
天井には大きな穴が開いており、そこから長方形の紙が無尽蔵に落ち続けている。BGMは低域リバーブをかけたトランス音楽のようで、まさにこの展開は高次ポカリスエットのCMだった。
「汗も出ない。とにかく象徴的建築を見つけるしかない」
男は出口を抜ける際にレジを見た。ここには花しか存在していない。花食をしているのだ。

外に出ると極彩色が広がっていた。男はアダルト・ビデオ店的な印象をもった。また自分の心因的な問題に対応しているようにも感じられた。
「連想力は無駄である」と男。
しかしヴェルファイア車がペニスバンドに変換されるのを見て無力さを思い知った。
「たとえばサボテンのエロさ。しかしこの場合の「棘」とはどのような存在だろうか」
蛇の道は蛇。解決策はまさに連想力から齎された。
「なにか風船を針で割るようなイメージだ」
どれだけ走っても煽情的な世界観は続いていた。
節くれ立っていて、肉感的で。
男は従業員のタスクを握りしめている事に気がついた。それを心臓に当てると一瞬、鋭利なものを感じた。
50yd(ヤード)の路面に寝そべっており、女の残像が迫ってきていた。

男はセックスをしていた。まるで蠕動運動を体面になすりつけられているような感覚であった。
女は陰茎をあてがい挿入させた。
植物と機械の混交である。男は息を漏らした。
「今日も晴天です。別所哲也の失態を牡牛座が破裂するほど馬鹿笑いしたね。ちょいとbboy服貸して。それでお前は裸ね。だからお前ネットに晒しあげる。ここじゃゲルマニウム。俺癒すカドミウム。角に笑む福は来たる。俺お前の服着てる。そしてTEL。相手シュメール。相方今なにしてる」
正気になった男は自分の精液が黒いのを確認した。今もまだ射精中であり、精液が垂れ落ちるのを見ている。
時間の流れはかなり緩慢で、自分の精液が女の腹部にまだ到達していない。
また空気に乾いたような質感をもった。
薄ぼけた女の顔が次第に鮮明になり、正しい秩序の予感を感じた。

従業員の彼は虚空でずっと角(つの)を見ていた。絶え間ないイメージが流れる。どれもがグリザイユ調でとてつもなく宗教的である。
イメージはそれぞれ独立性をもっていた。また右上には丁寧に総イメージ数が書かれている。そのpからv(=22)に移行する瞬間、一挙に凝集しては光の螺旋が描かれた。故郷に還る。我々は大いなる母の下で存在している。しかし私だけの母になったのは、彼女の顔が浮かんだからだ。
彼は大いなる存在になっていた。

男は重油被害に遭ったような女の腹をまだ見ていた。女の顔は菩薩のようであった。
「全体的に運動量が少ない」
菩薩を彫刻化したかった男はまたセックスをし始めた。
そしてこの黒い腹が男に職能の芽生えを齎らした。
加速度的な射精へのエントロピーを制限するように男は自分の痴態を思い出す。
「今日も晴天です。それからなに言ってたか。ゲルマニウム、カルマニウム。違うな。じゃ、新しいのを作るしかない。俺は思う、我ゆえに我ある。それじゃファール。渦の音が鳴る。渦から海じゃなく漆から渦思い出す。1ダースのフランダース。オクターブ上の系譜に目が眩む。あと21g(グラム)。秤の上に置くプラム」
女の顔は浮腫んでいた。それを手で伸ばすと鼻骨が迫り上がってきた。東洋から西洋への兆し。彼女を抱きしめるとセックスを止めた。
男はバス停まで向かう決意をした。

pay day(ペイデイ)社は美術館用のバス会社だった。男はそれに乗り込んだ。目的地まで着く間、彼は物思いに耽った。
「ペイデイとは押韻的じゃないか。という事は母音を抜いてp・y・d・yだな」
螺旋を感じている。dはpの上下反転だし、yは二つで強調的だ。
「何よりもペイデイとはどういう意味だ。毎日支払おうという意味か。確かに社会原理とは反復性である。性も反復だ。肉体も分節を求める」
男はさっきのセックスを思い出していた。何か自分がアルファベットを宣告していたような気がするのだ。
すでにpayday(ペイデイ)社への興味は失せつつあり「p・d・y」の三文字の表音だけが忘れられずにいる。
男はそこに関連性を見出した。
「pからdか。pからyか。pがひっくり返るか。pに裂け目が入るか。ひっくり返すか裂くか」
つまり「d・y」いずれかの文字を含んだアルファベット二文字を自分は宣告していたのだと言いたいようだった。
最終的には発音の好みで判断した。男はひっくり返す方が好きだった。
バスは目的地に停車した。

美術館はまるで要塞のような外観だった。
黒色の建造物で、接面する辺は金色であった。
入口扉は重く、床通路はきれいに大樹が埋め込まれる設計となっている。
曲線に対し、上手く重心をとりながら真っ直ぐ進むと展示室へ出た。
その広さに唖然とした。霊廟のような静謐さだった。ある瞬間、空気が張り詰め出すと宇宙と直結になった事が分かった。
作品は一つだけである。巨大な額が目の前の壁に設置されている。
額の中には10mの金色の文鎮があり、川の字に三本並んでいる。
男は対峙している。新たな秩序がその向こうで存在しているのが分かった。しかし何かが足りなかった。
男は「p・d・y」を引用し始める。

「プディか。いやパドルか。パドルとはどういう意味だ。いやペイデイに立ち返ろう。あるいはオッパイデカイか。違う。ペンデンスか。インデペンデンスの略語か。自立という意味だ。しかし合致しない。意外にもそのままp・d・yであるか。文鎮も三つである。文鎮もp・d・yもそれぞれ個別的に意味がない。おさらいである。dはpをひっくり返した形。yは重複しているので強調的な意味合い。だからp・dに重要性がある。ひっくり返すという事。文鎮をひっくり返しても意味がないならばpayday同様くっつけてみるより他ない」

ここで一つ問題がある。文鎮は巨大である。また厳かな雰囲気であるし、男はなにより2m以下の身長しかない。
そこで私はこの真相を書いておく事にした。以下、箇条書きである。

1.文鎮は三つくっつけると正方形になる
2.従業員は虚空を超えて白百合の中で発光する
3.彼らはハイオクターブ化した私の男性性と女性性である。

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《補注》
男の思い出した「p・d・y」というのは誤りである。正確には「pからv(=22)」であり、従業員の彼が見た虚空の総イメージ数である。vとはアルファベット22番目の数字である。
そして彼のイメージは16番(=p)から22番へジャンプしている。
それは17番から21番まで失っているという事である。
つまり「q・r・s・t・u」を失っている。
失われたこの文字は正的に発音すると「クリストゥ」になる。
「キリスト」と発音するには「u」が不要であるかまたは「キリスト・ユー」の意である。
(キリストとはあなたである)
「q r s t・u」とは「4・1」と言い表せる。

キリストとは4文字である。またアルファベットの4番目とは「d」である。奇遇にも「p・d・y」と対応している。