צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

【小三角形の輝き】

葉緑植物の仕分けも終わって、事務所の黄ばんだタイルに横たわる。天窓から雨すじのその先の事などを考えていると寝ており"ある機器を通って"この伸縮する仮死状態の塊を見ていた。
《彼》は赤いオーブを伴って服それから皮膚が破けて腑(はらわた)があらわになっている。
とても細密なそれは幾何学の線形が物象化したような銀細工の調べによってまさしくオペがなされていたのだ。
まず靴を脱いだ。これは《私》の事である。靴下を脱いで、上着を脱ぎ、パンツを脱いだ。
トランクスのみの私は彼に近づいていき、右手に見える猿の神を一瞥しながらここで止まる。
ちょうどそれは60°三つの小三角形のような位相であった。
左の点に私があって頂点に彼、右の点があのモーブピンクの神様である。
ふと彼の顔つきに目がいった。それは彼がこれから何か大きな偉業を達成するにあたっての最後の青年の顔である。
私にはそれが母型と父型の2パターンが見えていた。
共感覚のそれでは母型のルートは真っ赤な色をしていてフォーマルな正装によって補色されている。
だから私はすぐさまbodyguard(ボディー・ガード)を連想した。
実際に演じていたのだ。
陰茎の皮を左手の人差し指で尿道を押さえる形で蓋をし、猿の神とは真反対の窓外を見やる。
正午の黄色の太陽が低い。そして青い草が風に吹かれて真上へ伸びている。
背広で異常に着太りしたような痩身の天使がトイレ辺りに舞い降りる。(実際のパースは廃屋の室内階段の辺りである)
それで私は粘っこいダンスを踊りながら脳天を撃ち抜かれる。
スローモーションの実弾が猿の顔の前で静止して図面的に固定される。
被弾して倒れる私は彼のところまで転がっていき、逆さ向きで鼻の穴を"合わせた"。
次第にこの舞台自体がスキャニングの白いモアレの平行線に飲まれていき、それがかえって渇いて鮮明化するように、そして排水口に小三角形共々飲まれていった。

ポイスはファイリングされたビニールを指で擦っていた。付箋にはナンバリングに該当する「no.18」の文字があって、黙示録のような触書きとともに白黒印刷された活火山の写真が映っているページであった。
ハンバーガーの具がハンバーガーで、おかずのハンバーガーの具はエメラルドみたいになっている」
ヴェルサーチの革パンを履くのに苦労して、彼は太陽儀を倒すのだ。
肘が片腕に二本生えている彼のその決定的ビジョンは十分に我々を吃驚させてくれた。
赤ワインから樽へ、樽から葡萄へ戻っていくように起き上がった彼は暗転のごとくカーテンを勢いよく開ける。
突如、視力の超過した白い閃光が広がって"それから目が慣れるまでの時間に神は何をやっていた?"
実際に慣れたところのその庭で何が繰り広げられたかは説明しがたい。
しかしそれは聖書の実在性が伴っているとはいえて、その具体さがかえって我々に取り返しのつかない地獄の中にいる事を伝えていた。
見ろ、あの躍動感を。裸体が幾重にも駆け回っていて、連中の真上の輪っかは電球の円形よりもどぎつく、その生命力はまるで性器と直管関係にあると示している。
彼が向き直ってこれから作業に入ろうとするので、判明した事。
それはこの窓は額装であって、この庭で行われる神の振る舞いは「白いたわむれ」という題であるという事だ。
しかしそれは演劇ではなく絵画であって、内容ではなく、現象であった。
勿論《ここ》が何であるかといった問題があるが、最悪にもそれを考える正常な頭がないのだ。
ただ彼の仕事ぶりがそれを説明してくれるというだけだ。
しかし私がのぞき見する限りでは彼は「白いたわむれ」の模写を書き続けていた。

ごく普通の家族が、集団リンチの会場をジャックした。つまり主犯格の子の家にこの家族は乗り込んでいって被害者含め半殺しにしたのだ。
膨満した顔がいくつも天井の木目を"見ようと"していた。
「おい、チャンネルを探してきてくれ」
ピラミッド型の三方向に散る父・母・子である。
しかしリモコンはボコボコになった彼らの下にあるのである。
先に見つけたのは父であった。時計は23:45を指していた。
子供らとはいってもそれなりの質量があるので彼はこの瀕死の体を到底起こせそうになく憐れにも窓を見つめた。
一般的な庭が目に入るがその先の外壁は隣家によって白く塗りつぶされた様子だった。
三人がかりで一体ずつ起こして、それから窓の外へ放った。
そしてようやく薄型40インチの液晶にビジョンが灯る。
映し出されたのは報道番組だった。特集のようで治安の悪さが一目で分かる。呑んだくれの数人が羽交い締めにしあってごった返していた。
まるで儀式のようにこの《父・母・子》は三角形になって座っており、順番に何かを食べていた。
それは父の裾から取り出されたもので独自の調理品だろう。(私はサーターアンダギー的なものであると思う)
二階から降りてくる音がした。そして一斉に家族が目線をやる。主犯格の父である。
彼は目をかっぴらいて萎縮していた。軍隊のような硬直が起こって、それから弛緩に手間取っているようであったが結局は身にまとったものをすべて脱いで、玄関を出ていった。
この呑んだくれの乱痴気映像は永延に映し出されていた。
家族はそれをずっと眺めており、左手の庭では瀕死の山になっている場所に彼が到着した。
彼は子供らのパンツを脱がせて全員が性器の見える格好に仕立てた。
そして親としての苦悩の行ったり来たりをして、号泣した。
まさしく月に吠えていた。

この異常事態を私は収拾出来なかった。しかし結末はこうである。
父・母・子は後頭部から被弾して即死。庭の彼の号泣が次第に低音になり、呑んだくれ連中の衣類が破裂する。ナレーションはこう伝えている。

「二人は取っ組み合いをしている。理由は金銭問題である。片方が無銭飲食を目論んでいたのである。二人は互いに怒気を強め合って、ついには腹が破けてしまった。そこには腑ではなく二つのビジョンがあった。片方はbodyguardの舞台。もう片方は「白いたわむれ」という絵画」

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