צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

「記号学としての階段」

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キャパ・リダイレクトの瑞々しい客間は赤色灯で光っており、乳白色の水溜りでAIが前転を繰り返す。

「汝の苦しい御霊を解析しよう。その経路を、経路の先を、その横たわる悪霊を無理やり裁断し、つまりプレスし、平べったくなったそれを粉状にし、汝はすべてを忘れて生き、何もない地平を駆け回り」

ラジオを止めるとデスクの海賊帽を取った。
階段の図面を手に取ると、最上階まで上がっていった。
一室の真ん中にはマンホールがあり、その手前には女性のマネキンだけが置かれている。
「キャプテン・フック!二枚サービスだ!」
男はラジオを止めると肌着を脱ぎ捨てた。
「熱っぽくなってきた。「女性」とはなんだ。芋づる式にこの雌にまつわる歴史を軒並み引きちぎりたくなってきた。私は男なのか?女なのか?」
抱きしめているマネキンを床に叩きつけ男は馬乗りになった。それから虚脱した。
胸に大きな太陽の刺青を入れているので決して仰向けにはならなかった。
男はマネキンに覆いかぶさると永延にそのままだった。

《海賊の解体法》
薬効状態と潜水というのはベクトル間にちょうど36°の開きがある。
直線を結んでいき図形化した砂時計。
砂時計を端末から脳神経に送信すると、外出した。
外観どころかコンクリートすら幻滅した視界には赤いとぐろだけが見えており、そこまで目指した。
(海洋深層水が聖者を溶かしたような物質。それが8の字を描いて回るコンピュータの待機画面)
とぐろは近づいて見ると大樹のようでしかし表面は滑らかであった。また剛性が強かった。
抱きしめてみる。強くそうするたびに跳ね返す力を感じた。
頭上を見上げてから頂点まで登ってみる事にした。
結果的には卵を発見した。
じっくり見てみると黒い針金がわずかに茂っており、その気味の悪さに握り拳で殴打した。
強い衝撃とともに光が溢れた。
ひとしきり大声を上げると、禿頭の男が目の前にいた。
男の血液が顔に垂れてきて、馬乗りになられているのが分かった。
「おい!何しやがる。誰が弁償するんだ、こんなに酒瓶を」
男は私をなぎ払って、陰茎がないと叫んでいた。
男の陰茎は棚の下にあった。
「そこにあるよ。棚の下」と私。
男は目を剥くと力のない声で「ありがとよ」と言った。
陰茎を拾って、股間にあてながら卒倒した。
べっ甲色の血だまりに倒れるその異様さに端末の送信が切れてるのを思い出した。
視界を変換すると古代ギリシャ時代の生活が広がった。全てが青みがかっており、娼婦の逞しい腕回りが印象に残った。
コンビニエンスストアにいるのを知ったのはそれからだった。
友人も立ち会っていたようで、門外漢であるのにこの光景の当事者のように振舞った。つまるところ服を脱いで拭き始めたのだ。
「お前も拭け」
彼とは違って下を脱いで、それに倣った。
男の股間部の切れ端を発見したのはすぐの事だった。
性器はおもむろに露出しており、左手には携帯が握り締められていた。
彼が話しかけてきた。
「背中を見てくれ」
鯉の筋彫りを見つけた。それを指でなぞっている内に彼は向き直ってキスをしてきた。
弛緩に伴い、小便をたれた。
彼の足と、男の足を濡らした。

無重力とは膣の単位的形式である》
航空機とは宙に浮くマンコの数。これは言えると思う。地上の隆起には一切の霊的なものは感じられず、窓越しに天を仰いでみるが単なる大気でしかなかった。
ともすれば機内は人の温かみで溢れかえって、つかの間の家族はソウルメイトのようにも思える。
私はすっかり冷静を取り戻し、自分が何者か分からなくなっていた。
それどころか意識混濁に陥った。
痙攣する私を押さえつけるCAは性の否定というより性の制圧に近いものがあった。
パイロットもすでに骨抜きに違いない。
眼窩まで自分の吐瀉がかかった。
CAは私の隅々をさすって懸命につとめた。
それから回復する頃には地上も輪郭を表していて、呆然としていた。
それからトイレに入るとメモをした。
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「無意識について、境界線について」
・虫とは鏡像をもたない
・虫とは種の全体意識で生きている
・虫とは無意識そのものである
・虫が人家に侵入する事は進化ではない
・虫にとって人家とは地続きのものである
・自然に家がある事は不自然である
・自然とは家がある事で無意識になる
・境界線とは存在していない
・境界線とは自然と無意識の区分である

私は航空機を出る時にCAのマンコを心の中で数えた。