シャンパンタワーのそれぞれグラスの飲み口はそれが円形であるがゆえに奇跡が起こって縁が遮蔽された。頂上から段付きで落ちる精液。言語にbaptismaされるバベル的光景だ。
無形の最高位はビル群から逆行した。つまりは最高のものを知っているのに最高存在にはならなかった。彼らは速度性を借りるより他なかった。
そんなわけで「I」がしている魔術に参加したのだ。「I」は「I」である他分からなかった。わからないまま魔術が行われている。
（様々な情報の波のなかで「I」はどのようにしてそれらを取捨選択させられたのか）
「I」と呼ぶところの彼の位置についてこうは言えた。
1.自然界の規則性が認識できない地点にいる
2.その地点は自然界と直接的に関わっている
彼にとって「中断」が神的なギフトであった。
彼の（真実に迫るようにして、しかし中断を余儀なくされた）一節がある。
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白い凹凸のブロック。つまりは四角形である。白いという印象がある。白いので四角形の下には網目状のグレーの繊維が敷かれている。すぐにそれが保存則のメタファーである事が分かった。この光景に対して関与できないからこそ思い出されたものがあった。銃器である。そしてこの銃器は現実の血生臭さとは関係がなかった。
医療のように使われる銃器
一つの死体が地上で横になっている。（これはサンプルのよう思われる）
私はこのように考えたのだ。もしこの長短の水平線の真下でアーチがかかっていたら？
それを詩的に表現すれば「聖人の無意識では昏（くら）い虹が生えている」だ。
あるいは「直立の女性の腹部に鉄板をスライドさせる。その真下には子宮がある」だ。
類推学的には地球で虹がかかればそれは天界での不幸事を意味するだろう。
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コスメのプロモーションビデオがきっかけである量子物理学者が論文を書いた。
また「I」はそのインタビュー記事を読んだ。
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つまりあなたはWHYH（化粧品会社）のプロモーションビデオを見てこの衝撃的な論文を書いたのですね？
「まさしくそうだ。家で雑種犬を飼ってるんだが私の部屋からリビングまで行き来するものだから何を意図してるのか気になったのがはじまりだよ。それが直接なにかを意味してはいなかった。リビングのソファーに座って生垣を見てる内に深夜番組が始まった。下品な性的番組だよ。色んな突起物を女性がスロートしてた。私のポリシーは忌避する事を避ける！だ。だがこの場合はどうする。私はピーナッツクリームを食べ始めた。すぐに血糖値が上昇して私はこの下品な番組をサイエンスに変えた。なんならズボンも脱衣していたよ。人工的な野生の姿になりたかったからね。それからあのコスメのプロモーションビデオが始まった」
WHYHのプロモーションは社会現象になりました。赤い空間上で黒人女性が白い塗料を飲んでいる。
「アート的にも最高だよね。それで黒人が白いAIみたいになっちゃった。あれは胃袋の中の生化学的な営みを指示している。そして女性は天井を破って楽園に出る」
それでこのビデオが実際にどのようにして論文へと？
「別に直接的には関係ない。ただ最後、あのビデオでは楽園内の泉にたどり着くだろ？そして化粧品が水面から浮かんでくる。それがビジョンとして新鮮だった。本来こうあるべきだってね。少なくとも人間を支える知性とかの秩序としてね。そこから逆算して赤い空間の事を考えたんだよ。実際は庭で（ほおずき）を採ってる時に閃いた。妻と仲直りする方法を考えながらだ」
あなたの論文が製造工程を経て社会を変えるまではそう長くなかった。
「論文よりもまず人間の感情をさまざまなベクトルから数値化できたらという発想が浮かんだ。そもそも医療の発展とカルマは相殺関係にあると思ってたからね。もしどんな病気でも治せてしまえば運命というものはなくなる。でもそういう事じゃなくてこの局地的な瞬間の状態を数値化できないかと。アーティストはそれを内容的に示すよね。でも道のりは長くなかった。プーケットで祝祭に参加したときだ。それは裸で果実をぶつけ合う儀式だ。ある秘儀参入者が私を手招きしてね。そしてお前は霊力が弱ってると言うんだ。致命的に。そこから私は性エネルギーについて研究した。そこで得られたのがこの論文とMDNDだ」
この論文について簡単に説明してください
「射精せずに超感覚的になって不安を退ける事。そうすると人間は特殊な状況になる。つまり潜在意識をそのまま物象化できるようになる。これがすべてだ。子供じゃなくて物を産めるようになるんだ。また潜在意識の切り離す事は人間を個体にしなくなるという事も分かった。だが潜在意識によって人間は苦しんでいる。だから潜在意識を切り離しながら人間が生存する方法を考えた。そして出てきたのがインターネットの存在だ。我々は非対面のコミュニケーションをもう四半世紀も経てきている。みんな思った事を表現していると思っている。あれは思わされてる事を書いてるんだよ。つまり自分と鏡合わせになっている。この状況というのはまさしく個人と潜在意識の位相を表している。話を戻すと物象化するためには共有率が問題になる。つまり潜在意識を切り離した後の鏡像の強さの問題だ。鏡像がないと精神病的状況を引き起こす。この鏡像というのは数値化する事で一本化できると思ったんだ。というのも我々の個性というものは「調度」でしかないんだ。この調度は数字で片付けられる。つまりインターネットで投稿するにあたってAIが「単語自体や文法、言い回し」等を判断基準にして数字を付加する事だ。数値化が鏡像になるんだよ」
MDNDとはAIというよりは独自のネットワーク・サービスにあるのですね。
「MDND自体が象徴であるのが重要なんだ。なにせ射精せずに不安を取り除く事で物が産めるという事実があるのだから。見てもらう通りこのMDNDのマークはインターネット空間が手紙のように四つ折りにされている。そして外見はメタリックだ。まさしくメタリックのピラミッドに見える。ちなみにMDNDという名前はWHYHを半分にしたところからきている。またこのネットワークサービスはオフラインでも投稿できる。そして投稿すると数字が付加される。数字をタップすると特定のSNSにつながる。我々が仲間を探す必要がないんだ。すでに遺伝子的とも言っていい仲間同士がSNS上で出会うんだ。そしてこのSNSは文字列分だけある。つまり無限だ。」
オフライン投稿でネットワークにつながるというのは画期的ですね。
「まず数値化されるとSNSができる。そこがネットワークを供給するんだ。それは電波に近しいものだが、どちらかといえば風力にちかい」
ますます興味深いです。それでは具体的に人々は何を産み出すようになるのでしょう。
「地球だよ。それも実際の地球だ。地球は物質的側面もあるがその正体は集合知だよ。そして人々が何かを産み出すわけではない。また地球上に地球が存在する事にもならない。地球が地上に物象化する事でこの地球は別の天体になるんだよ」
いつサービスが開始されるのでしょう。
「2020年12月だ」
