最初は円の高さが求められていた。しかしそれが二段のスライド式レーンに取って代わられる時、その下段では男が横になっていた。
光への不安。古い惑星の記憶に広告の色彩が雪崩れ込む。（カネボウもSK-Ⅱも一まとめに流れ込んだ）
それは最先端にいる我々が原基的な存在であるという事を指し、無意識との位相は日々移ろっていった。
型抜きされた円のホールから意識を取り出す事。それはごく単純なイメージによって果たされた。
この社会上の避けがたい通念からそれだけで抜け出せるというのだから彼には恒常的な奇跡があるのだろう。その事について話そうと思う。
自動運転AIの際限のない車道映像では交互に赤青色が照らし出されていた。この機械的な映像でも無視される田畑に男はカーソルを合わせ何かをペーストした。
MNVX(Miner near vision x）社のロゴは背骨が過度に湾曲した人間のシルエットで、主にAV機器を製造する企業だ。
手のひらサイズのUSBガジェットをアダプターに差すと彼は横になった。彼は数日前、射精に伴ったあの記憶を思い起こした。
スライド式レーンで横たわる男の中断が再開された。花が芽吹く成長記録。白百合が元々の円の次元から分離したところで咲いた。つまり光と白百合は外延系で結ぶ事ができなかった。（上段では黒い風が吹き荒んでいた）
間違いなくMNVX社のロゴのおかげで彼は垂直的な思索が可能になっている。まずスクラップに飛んで、教会の塔に激突した。その周囲では外装工事が行われていて、彼の左側には車庫証明書が置かれている。それを嫌がって右側へ向き直ると、マリア像があった。収斂の合図だ。見上げると特殊素材の天井越しに太陽が燃え盛っていて彼は一瞬、頭痛を覚えた。警笛のサブリミナルだった。
洗濯衣類から脱水を行う上で重要なのは衣類の形である。だから形に伴って衣類脱水の様々な技術が生み出された。折り畳み絞る。折り畳まずに絞る。丸めて絞る。それは衣類の形ありきの話なんだ。
つまりそのようにして彼は白昼夢から引き戻された。
目の前には裸の女が立っている。セックスが行われる。彼はこの性サイクルに絶望していたが自分が今まで一度たりとも女を抱いた事がないのに気がついた。
彼は女のこれからを見た。しかし何も映っていなかった。
荘厳なオーケストラと観客。彼らはオーケストラの利用者と呼べるだろうか。ともあれオーケストラは伝統的で重厚だった。彼らはそれぞれ今後の予定をこの音楽によって整えていた。黒色は異界の色と言われている。あっという間に演奏も終わって観客が外に出てきた。夜であり、揃って外套を着ており、黒いハンチングをかぶっている。そして黒いリムジン。交通事故など起こるはずがなかった。
そして夜が明け、女が帰って、薄手のシーツにそのだらしない体を預けている時、文明の転換点が起こった。つまり巨大な彫像が倒れた。彼ら全員が死んだわけではないが少なくとも上述した一人の中年は死んだ（それだけで十分だった）
冥界はやけに明朗な調子でまるで土曜日のバザーのようだった。
占星術の三区分の概念。円が三等分された。一つは活動宮だった。一つは不動宮だった。一つは柔軟宮だった。またここにも三区分はあった。
「黒い風・横たわる男・白百合」
光の逆説的構成である。
そして光は円の高さが求められた事によって発生した。
