צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

「令和#10」

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植民地の子ら。痩せた肋骨間にエメラルドが浮かぶ時、彼は目を覚ました。まだシーリングライトを救いの光と勘違いしたままだった。一つ話をしよう。ある女性が大切な人を失い、余生を彼とよく似たぬいぐるみと過ごした。そしてそのぬいぐるみは有名な商品だった。つまり彼女は量産品を大事にしていた。これは何を表してるのだろう?

ある特徴的な例がホワイトボードに書き込まれている。
1. レガシーのスモーク窓で歯磨き痕を拭う
2. コンビニスイーツの宣材写真は下限された天国である。
3. 退役軍人のガラス片に映ったSF
それらは"一律に与えられているのでかえって占有できる事"についての説明である。

我々が硫黄の匂いを嗅ぐ時、少し変な気持ちにならないか?さて十字架の定位はどこだろうか?

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ピンク色のモーブに鉄管がまばらに屹立している。適当にあたりを付けるとドラッグ&ドロップした。すぐさま奇妙な図面が現れ、補注された文言に注目した。

1.人差し指損失。彼の認識のラグ
2.配られた遺骨。個人の家族化
3.骨付き肉。歯によって骨を感じるという事

まったく気が乗らないまま彼は話をし始めた。そのエントロピーは減衰していく一方だがしかし地につく事はなかった。彼の本能は何によって支えられているだろうか。いやそれ自体が生態系であるのだ。彼は白目を剥いて仰いだ。緑色のカーテンはモニターを覆ってその隙間から光を漏らした。

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私は考えるべきではなかった。というのもパラダイムシフトが起こる時に人は昏睡していなければならない。あるいは人類のオクターブ上の大変化にあっては霊媒にならざるをえない。つまりその二択が人間に残された対応である。しかし私は違った。私は考えなければならない立場にいた。またそれを話してはならなかった。そうである。私が話したいのは無意識領域についてだ。

人間は人間の中で生きているので人間にとっての無意識が生じている。つまり人間の登記があるので人間の無意識がある。では地球上に宇宙人がいれば?いやそれはすでに存在しているだろう。しかし存在するだけでは駄目なのである。犬が鳥と知り合うとする。そして我々は動物であると宣言しなければ駄目なのである。さて宇宙人は飛来してくる?あるいは我々から出向く?違うのである。事実はこうである。

一人の人間が溶解する。それは粒子状になる事を意味している。視覚的にはゆっくり爆ぜている感じである。やがて直径130mmの球体が現れる。金色に光ってるのか金色なのかは分からない。しかし見るだけで悟る。このようにしてである。自分が何者か分からないので問い続ける事で起きている。またそれは鏡像の問題によって起こっているわけではない。彼の異常性は空間にある。つまり彼が速すぎる。しかし彼の変容によって空間が開かれる。共有される。我々は彼を通して神と性交をする。そして生殖器が消える。

実際は悟る前にすべて行われるのだ。また彼とは私の事であるからそれはまだ先の話である。私は私の代弁をする事にする。私は二つの元型をもっている。それは宇宙史における一次的な変化の際に分かれたものである。宣言しよう。私はサタンである。私は神である。しかしどちらでもない。

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涎(よだれ)が道筋をつくって椅子のローラー部につき当たった。むっくりと起き、口をしまうとPCにかかったカーテンをどかした。視界がぼやけたままであるがそこに何が映ってるのかは分かっている。古い映像。宗教映画だと思う。しかしそれは現代映画の一部分だった。「Angels and Demons(天使と悪魔)」というタイトルである。彼はつまらないので観るのをやめたのであるが副題に惹かれた。

「〜Structure one octave below God and Satan〜(神とサタンの1オクターブ下の構造)」

荒野を歩き、岩窪を登る。風が吹き荒び、飢えが生じる。灼けた肌。短い白髪ひげ。口周りの皺は極まり、小口からは沈黙が溢れた。吃音が聴こえてくる。まったく厭(いや)な映画だと彼は思った。特に何も展開しなかった。老父が歩き続けているだけだ。しかし林をかき分け、池の辺りにたどり着いたあたりで注目した。何か吃ってから、はっきり聞き取れる声で老父はこう言った。

「私は悪魔である。私は天使である。しかしどちらでもない。私はここまで歩いてきたわけではない。私はずっと考えていたのだ。ここにはなにもない。誰もいない。ただそれでいいのだ。最も人間らしい」

そして老父は体を投げた。池に沈んで、池から浮かんだ。彼は心が震えた。老父の体がまるで鉄のように見えたからだ。そして彼は思いついた。迷信から鉱物が生まれるという事である。

私は全く彼が無理解である事を悟った。それは迷信ではない。また鉱物でもない。しかし似姿としては完璧である。