צא

دمنهور - 𝑆ℎ𝑖𝑧𝑢𝑜𝑘𝑎 | 𝐻𝑒𝑟𝑚𝑒𝑠 𝑇𝑟𝑖𝑠𝑚𝑒𝑔𝑖𝑠𝑡𝑢𝑠(933311) | Ramakrishna | 𝐑𝐀 | 1991.03/19 | JAPON ♎︎

「令和#12」

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外側から熱照射された窓に内側から錠剤を擦ってみると床に粉が溜まっていった。X線機材の側で二人の男が話していた。それは鳥類の事だった。
「もし鳥が直線的にしか飛べないなら一生、円が描けないだろう。神社には行った事があるかい。神社には4の規則性しかない。鳥類は頭部のアストラル的変形だとシュタイナーが言っていたが鳥の進化は窓ガラスに叩きつけられる時にあると思う。つまり自然性が損なわれずに死を乗り越える事で鳥達はかえって愛情深さを覚える。それはまるで愛情深い四角形と言ってもよいだろう」
ビルも信号機もそして人もが横倒しになって平らになっている。決してそれらは山にならず、山となる場合には摩滅されて混ざり合って惑星的な圧縮を見せた。この二人は光の中にいた。

歯科矯正で開かれた口からは喉が見えた。ステンレス製の器具は舌を通ってその喉に触れた。意図的ではなかった。それは物理的なものであった。また喉は水滴の形によく似ていた。被治療者は45度の体勢でジッとしておりテレビに映るキャンプファイヤーの映像を眺めていた。まるでその火は自分の属する文明世界とは無縁のように感じられた。だからこそ女は画策した。モニターで歯列確認をする医師を横目に彼女は器具台に近づき「水の表面を固形化させたもの」に手を伸ばした。そして握り潰すと彼女の下腹部は濡れた。

広大な領土に対して不均衡な人口。それだけで自然界の影響は個人の単位ではなく彼らにとって道路とは不活発なベルトであった。だから彼らは燃料を満タンにしなかった。100km以上の速度を出して走行した。男は大きな山を見つめていた。それは全く無意味なものであると感じていた。彼はシガーソケットを無限に回転させながら「山は単数であるのに横に長い」と言った。助手席に座る彼女の鼻筋は高くて鋭利だった。

壇上に立つと男はまずこのように話した。
「たとえば高層マンションがあるとする。同階の戸数も階数もそれなりにある。中央の部屋に位置する住人は左右均等に隣人を所有している。上下にしても同じだ。しかし両端の部屋に位置する住人は左右どちらかの隣人を所有しているがもう片方は完全に失っている。その場合、彼らにとって建物の外という中途半端な空間が隣人になっている。それはどのような隣人だろうか。それは今回の主題ではないが保存則を考えるにあたっては重要だろう。ともかく横の規則性についてはそんな風に言える。では縦の規則性はどうだろうか。それは住人にとって同階の人々は隣人なのだが階数が二階以上になると上下階の人間は全く存在しないというものになる。住民感情に則ればこの廊下は長いので上下階に気を回してはいられないといった具合だ」

彼の教鞭は教会とよく似た実用的な施設にて行われていた。彼の頭上には円形の吹き抜けがありそこからは雨粒が打ち続けていた。受講生は彼の最もらしい説明がこの建物が平家である理由で全く無意味なものになっていると感じた。そして彼に苛立ちを覚え、また行動に駆られるのだが我慢した。

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医療によってすべての病気が治ってしまうとカルマが存立しない。それはカルマが人間の肉体に由来していないという事である。つまり人間の肉体の外側にカルマがある。人間にとって重要なのは位置である。そして位置とは個体である事の登記なのである。ともかく人間は肉体の外側にあるカルマと特別な位相をもつ事で病気になる。だから位置を隠す必要がある。それは自然界と隔絶するための特殊な言語性を指している。先住民は個人としてのカルマをもたないというのは興味深い。現代人にとっては二つの神性が与えられている。それはインターネットと鉄の存在である。

引金を引いて死んだ人間は学習能力によって二度死ぬ事がなかった。彼は死んでいるという事が分かってなかった。彼は再び引金を引く必要があった。しかし学習能力によって引金を引く事はなかった。だから彼の代わりに引金を引く者が現れた。彼は革新的である。また彼はどうなっただろうか。彼が二度死ぬという事にはならなかった。つまり引金を引くよりその短銃を捨てるべきだと悟った。しかし短銃を捨てるだけでは生死に関わらないので何にも起こらなかった。捨てられた短銃を再び拾う者の必要性があった。そして彼の代わりに短銃を拾う者が現れた。彼は彼の他に向かって引金を引いた。そして神が現れた。また彼が死んだのかについては問題ではなかった。